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1986年に輸出専用モデルとして発売されたスズキのフラッグシップスポーツ GSX-R1100は、当時の市販車モデルの中で世界最速の265km/hを叩き出し、一時は公道最速マシンの称号を獲得したことでも有名なバイクです。
そんなロードレーサーが今回の主役。イタリアのカスタムバイクショップ Rno Cyclesがこのマシンをベースにカスタムバイク「GIXXER FIX」を生み出しました。ネオレトロなカフェレーサースタイルでありながら、ベースマシンの素性を活かしたストリートファイターともとれる”戦闘力”の高いマシンに仕上がっています。
カフェレーサー×ストリートファイター
GIXXER FIXはご覧の通り前傾姿勢の強いカフェレーサー。しかし1980年代を代表する大排気量レーサーレプリカのひとつ、GSX-R1100からカウルを取り除いてネイキッドに仕立てる手法は、1990年代に流行したストリートファイターそのものです。発祥した時代は違えど、どちらも公道レースの中で培われたスタイルなので、親和性が高いのは当然といえるでしょう。
ストリートファイターの印象を決めるヘッドライトはハーレーダビッドソン V -Rodから流用した丸目1眼。側面から見たとき、なだらかなアーチを描いている様がデザイン性の高さを感じさせます。ノーマルの2灯式から感じられるレトロな雰囲気はすっかり鳴りを潜め、現代的なすっきりとした印象のフロント周りといえる仕上がりです。
下回りを彩るステンレス製のオリジナルエキゾーストパイプは、一度1つにまとめられてから2本に分かれる4into1into2タイプ。純正は右側1本出しでしたが、こちらは左右2本出しのショートサイレンサーとなっています。インパクト抜群!
ドゥカティから足回りを移植
GIXXER FIXの”戦闘力”の要ともいえるのが、ドゥカティのマシンから移植された足回りです。細かく見てみると、フロントフォークはパニガーレのもので前後ホイールとスイングアームは1098のものを採用。当然、そのまま付くわけもなく、ショックリンケージの固定方法の見直しが必要となり、新たに専用のサブフレームを製作するに至りました。1098に装着されていたブレンボ製ブレーキもそのまま流用されています。
リアにはフルアジャスタブルのショーワ製モノサスを使用。オランダのサスペンションショップ HK Suspension にてオーバーホールとチューニングが行われています。車高調整に加えてダンパーの減衰力調整をするためのノッチ式ダイヤルもシート下部に確認できますし、シートとタイヤのクリアランスが広くてサスペンションへアクセスしやすいのはグッド。気になるときにサッと調整できるのは理にかなっています。
公道の戦闘機で駆け抜けろ!
ストリートファイターの起源を振り返ってみると、転倒して破損したカウルを取り外してまでレーサーレプリカのスペックを活かそうとした公道レーサーたちに行き着きます。新品部品を購入できない貧乏ライダーの烙印ともいえるような立ち位置のカスタムとも取れますが、GIXXER FIXはそんな悪い印象を微塵も感じない、むしろ高級感すら感じるマシンです。いわば、ネオストリートファイターといったところでしょうか。
もはや旧車ともいえる1980〜1990年代のレーサーレプリカですが、思い切ってここまで現代的なネイキッドスポーツに仕上げてしまうのも、ひとつの楽しみ方かも知れません。これだけカッコいいストリートファイターなら当時を思い出して、峠に走り出したくなるはず。地上を往く”戦闘機”の如く、何者も俺には追いつけない……なんて。
もちろん、いくらテンションがアガっても、公道であまり攻めた走りをしすぎてはダメですよ。もう時代が違いますからね。