この記事の目次
ロイヤル・エンフィールドといえば、イギリス旧車の設計を今に伝える”シングル・バイク”として知られています。
そのエンフィールドをベースに、エンジンを砂型から起してVツインに改造、それを搭載したコンプリート車両を製造する、驚きのコンストラクターをご紹介します!
The Musket V Twin
製造するのはインド出身、アメリカ在住の”Aniket Vardhan”さんが主宰する「Indus Valley Design」。車体の完成度の高さに驚かされます。メーカーが製作したかのような佇まいですが、エンジンは1,120cc(シリンダー当たり540cc)にスープアップされたVツインです。
コチラは998ccバージョン。「The Musket V Twin」は、ほぼこの形で市販されています。製作者であるAniketさんは、エンフィールド(ご存知のとおりインド製、イギリス設計)のクラシカルなエンジンフィールは気に入っていたものの、「Vincent Black Shadow」や「Brough Superior SS100」のような高性能なイギリス旧車が異常に高価なことを残念に思っていました。そこで同郷?のエンフィールドをベースに製造しようと思い立ったのだそうです。
想像は誰でも出来るものですが、それを実現してしまう技術と情熱には感服です! 以降、少々長くなりますが、製造工程の一端をご覧ください。
エンジン製造工程
鋳物で何かを作るとき、”型”というものを使います。砂型とか金型という言葉を聞いたことがあると思います。通常、少数の場合は砂型を使います。「The Musket V Twin」も、ご多分に漏れず、砂型でクランクケースやシリンダーヘッドなどを製造しています。
コレは木型。この形状を鋳鉄に置き換える作業が砂型鋳造ということになります。
木型を木枠で囲んでセット完了。
先程の木枠に砂を流し込みます。
注入した砂を乾燥させているところ。
出来上がった砂型。欲しい形の逆バージョンを砂で製作したことになります。出来上がった砂型は熱処理して、硬度を高めます。
次はいよいよ鋳造工程。先程の砂型を木枠にセットして、高温でドロドロになったアロイを流し込みます。
クランクケースが出来ました! が、エンジン製造全体から考えると、ここはまだまだ作業の入り口です…。
鋳物の表面は凹凸があります。もちろんそのままでは使えませんので、しっかりと研磨します。
ボルト締結用の穴開け、ネジ穴製作、オイルライン製作などなど、作業は山ほどあります。
クランクケースは左右で合わせて使用しますので、シリンダー搭載部分などは左右を合わせてから加工します。
コレはオリジナルのクランク。単気筒エンジンをVツインにするのですから、当然のことながらコンロッドの追加等が必要です。そこで一度クランクをバラして…
コンロッドを1本追加。バランスをとったり、強化型のベアリングへの組み換えを実施していますが、あまりに長くなるので省略させていただきます。
コチラはシリンダーヘッド。バルブ類も組み込まれました!
自作エンジンの誇り、アルミ削り出しのイグニッションカバーは「THE MUSKET 998」の文字が!
こうしてエンジンが完成しました! 写真は1,120ccモデルです。
The Musket V Twinの製作者
製作者のAniket Vardhanさんはインドのデリー出身。工業デザインの勉強をするため渡米(修士号を取得)したそうです。そしてハーレー・ダビッドソンと出会ったことが、この「The Musket V Twin」を生み出したのです。
この「The Musket V Twin」エンジン、驚いたことに販売されています! パーツのみの販売から組立済まで、ユーザーの技量によって価格は異なり、約60~100万円です。その掛かる手間と技術料、完成車の希少性を考慮すれば、充分にリーズナブルだと思います。欲しい方は是非お問い合わせしてみてくださいね。
また、この「The Musket V Twin」を搭載したボバーカスタムを紹介しています。ソチラも合わせてご覧ください。
参考 – Indus Valley Design