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時とともに他の人気ジャンルとの交雑や、一部のビルダー / オーナーの新たな発想や解釈により、本来のそのジャンルの定義や目的からは外れていることも多いカスタムマシンの世界。
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今回の記事ではフラットトラックレーサー、ダートトラッカー等と呼ばれるマシンの原点について掘り下げていきます。
フラットトラックレーサー、ダートトラッカーとは?
主にアメリカで人気の高い「ダートトラック」というレースがあります。レース距離・車両クラス・車両年次・ライダー年齢・性別による区分けはあるものの、基本的には砂や土を敷き詰めたオーバルコースをグルグルと回ることにより、観客席からレース中の駆け引きの始終を観戦できる、まさにアメリカ人好みのものです。
加えて、少し郊外に出ればいくらでもコースに向いた土地があるというお国柄から、1900年代から各地で開催されている歴史のあるレースです。
そのレース模様といえば、(コースの大小にもよるものの)直線部分も含めてほぼ常にドリフト状態、ちょっとしたドリフトアングルのつけすぎやカウンターステアの当てすぎの失速でコロコロと順位が入れ替わりながら、ライダー・車両同士の接触や転倒も多いという、非常にエキサイティングなものです。
滑らせながらも確実に前に進むという速いドリフトのためのテクニックが重要になることから、ケニー・ロバーツをはじめとした数多のロードレースGPライダーを輩出しているレースとしても有名ですね。
ダートトラッカーといった場合は、このレースに使用される車両、またはそれに倣ったカスタムを施した車両ということになります。主催団体による呼称違いでしかないので、フラットトラックレーサーも同じと考えてOKです。
ダートトラッカーの特徴
最も人気があり大規模でもある、AMAが主催するプロレースのクラス分けはエンジンをベースにした「ツイン」「シングル」「ツイン(市販車改造)」。これらはレギュレーションもあることから、おおよそオンロード車をベースにオフロード車としたスクランブラーと同様のアプローチの改造を施された車両となっています。
しかしながら、別の主催団体やアマチュアまで含めて見ていくと、旧来のオンロード車をベースとしたものの様々なアプローチの他、近年ではオフロード車をベースとしたモタード的なものが幅を利かせていたりと、千差万別といった様相です。このあたりが「ダートトラッカー」を定義しようといった際に混乱を生じる原因なのかもしれません。
そこで今回はカスタムのジャンルとしてのダートトラッカーを指した場合に、レースでもヴィンテージクラスとして特に定義されていることも多い、オンロード車から派生していった典型的なクラシカルなものと、それを範としてのカスタム例についてご紹介します。
ブレーキレス
現在でもレース用車両の殆どでブレーキはリアのみ、時代によっては全くブレーキを装備していないものがあります。速度コントロールはアクセルコントロールによるリアのスライド量のみで行われます。
さすがにこれを公道に持ち込むわけにはいきませんが(笑)。
タイヤ
比較的細いフロントに対して太いリアタイヤ、ブロックパターンは浅いものになっています。
車体
尋常でないバンク角でスライドさせることから、軽量でスリムな車体・エンジンであるほど有利です。
ダブルサス
これは機能的な面ではなく、「ヴィンテージクラス」の雰囲気を醸し出すためです。
アップマフラー
フラットに整地されたコースでは、スクランブラーほどの必然性はないと思われるものの、エキパイの破損やサイレンサーの接地を防ぐためにアップマフラーを装備されるケースがほとんどです。
シート
着座でのスプリントレースのため、クッション性よりもマシンの動きをよりダイレクトに伝えてくれることを重視したシートが好まれています。リアの荷重コントロールをするために、着座位置を限定されない比較的前後長のあるシートが用いられるケースも多くなっています。
ハンドル
基本着座ポジションで細かく正確な操作をするため、やや引きの大きい高すぎず低すぎない幅広のハンドルが用いられます。微々たるところですが、スタンディングポジションを重視するスクランブラーと差が出るのはこのあたりでしょう。
こんなふうに、カスタムのコンセプトによってはベース車両の選定も重要になってくる部分があります。
答え:非舗装オーバルコースに特化したドリフトマシーン
このように、同時期・同様にオンロード車をベースにオフロードへの適応の過程を辿ったスクランブラーと似通ったところが非常に多く、混同されている場合も多くあります。とはいえ、最近のメーカー製カスタム等におけるデザインテイストでの「スクランブラー、トラッカー」を、逆に公道向けに特化させていくことで互いが近づいていくのもまた当然で、厳密に区別する必要もないでしょう。
ただ、そういったテイストに自分なりの味を重ねていこうとしたときに、「カスタマイズ=自由な発想あってこそ」ではありますが「ノリで」「流行ってるし」で取り掛かってしまうのもなんだかもったいない。どうせならその源流や由来がどこにあるのかを理解した上で、よりそのカスタムのコンセプトに深みを出したいところです。
参考ーflickr