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「モッズコート」と言えば、現在では男性、女性を問わずに手軽に着られる定番アウターとして人気を博しているが、この「モッズコート」由来はあまり知られていないのではないだろうか?
モッズモッズコート=M-51だ
「モッズコート」という名称は1990年代以降の日本のアパレル・ファッション業界が発祥と言われているが、それ以前は英国の「モッズ」と呼ばれる人たちが好んで着用していたことから「モッズパーカ」、もしくはあるいは燕尾状の裾の形状から「フィッシュテールパーカ」などと呼ばれていた。
オリーブグリーンの色合いからもわかるように、元は米軍用に作られた戦闘服であり、その原型は1948年に作られたM-48にまでさかのぼることになる。
薄手の平織りコットンナイロン地、襟のフード、フラップ付き大型ハンドポケット、両肩のショルダーストラップ、そして裾の後ろが燕尾状に先割れしたフィッシュテールといった特徴を持つ戦闘服はM-48、M-51、M-65極寒野戦服(M-65フィールドジャケットのことではない)の3通りが存在するが、基本的には”M-51=モッズコート”と言っても差し支えないだろう。
日本で一般的になったのは『踊る大捜査線』の流行後
名称の由来となっている「モッズ」たちが好んで着用していたモッズパーカ。ベスパなどのスクーターにまたがり、細身の3つボタンスーツの上にモッズパーカを羽織るといったモッズファッションが日本で流行ったかというと、そんなことはなく、あくまでもマイナーなファッションのままであった。
日本でこれほど一般的になったのは、大ヒットして映画化もされたテレビドラマ『踊る大捜査線』にて、織田裕二扮する青島刑事が作中でM-51のレプリカを着用し、「青島コート」と呼ばれた頃から急速に一般に広まったと思われる。
着こなしのお手本には「さらば青春の光」
かくして「モッズパーカ」はその名称の由来でもある「モッズ」の名前を置き去りにしたまま、「モッズコート」という新しい名称を得て定番アウターへと昇華した。スーツの上から羽織っても良し、カジュアル服の上からも羽織って良し、ライナーを外せば、これからの時期でも着られるという高い汎用性を持つ、何かと重宝する一着である。
もし、この「モッズコート」に、ひと味違う味付けをしたいという方は1979年に放映された『Quadrophenia(邦題 : さらば青春の光)』という映画を見てはいかがだろう? 「モッズコート」を羽織った若者たちが、様々な着こなしを劇中で見せてくれるハズだ。残念なことを一つ挙げるとするならば、この映画には、かの有名なスティングもモッズのリーダー的な存在、エースという役名で登場するのだが、このエースはモッズパーカではなくレザーコートを着用していたことくらいだろう。