凄腕ビルダーの処女作!? ホンダCB500Fをビンテージトラッカー風にカスタム!

見る人を驚かせようと、もしくは他人と違ったオンリーワンを目指すあまり、奇をてらってやりすぎてしまい、使い勝手や走行性能を犠牲にしてしまっているようなカスタムは、あまり筆者の好みではないのですが・・・・・・

ふと目に留まったホンダCB500Fカスタムのストーリーを紐解いてみると、凄腕ビルダーの始まりが込められていてなかなかに興味深いものでした。

 

ビンテージな日本車カスタムを得意とするオランダのビルダー

アウトサイダーズモーターサイクルズは、オランダのフローニンゲンに拠点を構えるカスタムショップで、中心となっているのはビルダーのBert。「どんなバイクでどんなものでも造る!」と豪語していますが、作例では古めの日本車をベースとしたカフェレーサー・スクランブラー・トラッカーといったものが多数。ちょっと趣味がうかがえてしまいますね。

 

彼は面白い経歴の持ち主で、もともとは自動販売機の補充や雇われメカニック等の職を転々としていましたが、25歳のときにバイク事故の負傷で半年間のリハビリを余儀なくされます。そして何故だか唐突に美術学校に入学するのですが、そこで審美眼を養いつつ、学校の設備をフル活用して様々な金属加工技術を身に着けたといいます。

その後2011年に本人の弁では「スパナが何本かあるだけの、ものすごく狭い」自宅の納屋を拠点に、ガールフレンドのJeneとともにビルダーとしての経歴をスタートしたのですが、2012年にはアウトサイダーズモーターサイクルズとして本格的なショップを立ち上げることになります。

 

ショップの立ち上げストーリーが込められた1台

比較的シンプルなカスタムが多いアウトサイダーズの作品の中でも、ひと際ノーマル然とした佇まいで、かえって筆者の目を惹いたのがCB500F「Kickoff」。

それもそのはず、BertとJeneの共通の友人であるLindaの「端正でクラシックなバイクが欲しい」という要望で造られたもので、「Kickoff」の名前のとおり、ちょうど自宅納屋から本格的なショップを立ち上げて移転する時期に製作されたものです。

 

そのため、注文時には免許を持っていなかったLindaと「免許取得と完成との競争だ」ということにしていながら、6回もの店舗移転することになり、そのたび作業は長期間中断され、完成までには丸1年かかったといいます。ひどい話(笑)

とはいえLindaはじつに辛抱強い人で、文句もいわずじっと待つだけではなく、何かと作業を手伝いに訪れたそうです。そのちょっとしたお返しだったのでしょう、完成時にBretは小柄な彼女のために油圧クラッチをプレゼントしたといいます。彼らのいい信頼関係がうかがえますね。

 

実は超低予算プロジェクト?

Lindaの懐具合までは語られていませんでしたが作業にあたり、ベース車両として「まとめ売りのCB500」を見つけて購入しています。

どんな内容かというと、CB500が2台、CB750のエンジン1基、ホイール5組、その他の雑多なパーツがたっぷり15箱・・・・・・

それらを2個イチ、3個イチといいとこ取りした1台を組み上げつつ、残ったパーツは売却することで、他に必要なパーツを手配するための資金としながらプロジェクトは進行します。

 

低予算とはいえ、色に拘りぬいて地元の内装店でワンオフしたダイヤモンドステッチの質感高いシートや、サブフレームを造りなおしてパウダーコーティング、ワンオフのエキゾースト、650用のカムシャフト、強化クラッチ、スポークの張り替え、前述の油圧クラッチコンバージョン等、純正然とした見た目とは裏腹に手の入っている箇所は意外と多かったりします。

 

ハンドルスイッチはLindaがどこからともなく持ち込んできたというCBR600のもので、実働させるための配線には非常に苦労したと語られており、タンクの塗装ではわざわざ「2Kクリアコート」と商品名が記載されているように、当時は塗装機材もなかったのか、缶スプレーで塗装したと推察されます。作業中は「近所のバイクに詳しい先輩ん家のガレージ」的な光景が広がっていたことでしょう。

 

今や一大ファクトリーとなったアウトサイダーズMC

しかし、約10年経った現在のアウトサイダーズモーターサイクルズは、6基のバイクリフトと、CNC切削機、業務用3Dプリンター、各種溶接機まで備え、自社製作パーツやアパレルの企画販売も手掛ける、バイク屋としては大規模なショップ・ファクトリーへと成長しています。

どんなビルダーにも最初の一歩はあるもの。他の有名ビルダーのビギニングストーリーも機会があればぜひ見てみたいものですね。

Outsiders Motorcyles

公式サイト

Kenn

Kenn

モノと生き物の境目が曖昧なちょっとイタい人。 バイク・クルマに限らず、作り手の情熱・魂の込もったモノに惹かれます。 DOS時代から名乗っているハンドルなので、某声優のほうが後発デスヨ