ネオレトロの先駆け!? ヤマハ SRV250の魅力

バイクブームとバブル景気が重なるという空前の市場環境から、メーカー間の性能競争が激しくなる一方だった1980年代後期。日本のバイク市場がレーサーレプリカ一辺倒となっていたところに、真っ向からアンチテーゼを叩きつけて大ヒットしたバイクがありました。

1989年発売の、カワサキ「ゼファー400」です。カワサキはもちろん、各メーカーも追随してネイキッドブームを巻き起こし、過激になりすぎたレーサーレプリカは駆逐されていきます。

 

ブームに乗りながらXJシリーズを投入していたヤマハですが、「当時のネイキッド」として見るには、やや毛色の違ったバイクを送り出します。それが1992年発売のヤマハ「SRV250」です。現オーナーならではの視点で、私情をたっぷりはさんでその魅力をご紹介しましょう。

 

「女子バイク」と呼ばれヒットしなかったSRV250

まだまだバブル景気の熱冷めやらないノリであった当時でありますから、プロモーションにかなり力が入っていました。

当時のヤマハニュースの記事を見ると、ルーズフィットやオーバーサイズなスーツを着たモーターサイクルジャーナリストの根本健氏や柏秀樹氏、そして近田茂氏が登場してベタ褒めしています。

 

販売店に配られた販促用のVHSビデオテープ。前編では(当時はべらぼうな額が必要だった)ヘリ空撮を多用して、がっつり太眉メイクのお姉さんに会いにいくイメージPV、後編ではこれまたガボガボでビミョーな色のジャケットを着た、自前でフサフサの柏秀樹氏が開発陣へのインタビューしながらインプレッションを述べられている様子を確認できます。

 

有体にいってしまえば、「ビラーゴのエンジンとジールの足回りというありものを古臭いフレームに載せて、懐古調に仕上げた」バイクではあるのですが、従来の250ccクラスにはなかった高い質感を得るために、職人がひとつずつ手作業で磨き上げるバフ仕上げのアルミパーツをふんだんに配することで、パーツや工程にはかなりのコストがかけられていました。

ヤマハとしてもロングセラーとして確固たる地位にあるSRシリーズの傍流として定着させるべく、大きく期待していたであろうことがうかがえます。

 

しかし、あまり売れませんでした(笑)。知ってる人は「ヴィンセントのパクりかぁ」と斬って捨て、知らない人は「ブリティッシュなデザインで、なんでアメリカンなVツイン?」とピンとこない様子。

SR(Single Roadsports)Vってなんだそりゃなんていってる人もいましたし、まだまだ多かったスペック至上主義の方々は「女の子バイクじゃん?」とか評価はイマイチでした。

いかにネイキッドブーム到来とはいえど、バイクブーマーがヤンチャ盛りだった当時の250ccバイクが40~45psが普通だったのに対し、27psと遅すぎたのも不人気に拍車をかけたといえそうです。

 

そのまま不人気車街道をひた走りながら、よりスポーティなルックスに振ったSRV250Sを出したかと思えば、SRV250Tというシングルシートに巨大キャリアというビジネス仕様を出したりと、ヤマハ自身も迷走しているような様相を呈します。

 

1996年にはテコ入れで、一気にイタリアンな外装デザインに刷新されたルネッサにモデルチェンジしつつ、各部のコストダウン(バフアルミ→塗装、アルミリム→鉄リム)でSRVよりも5万円の値下げもされますが、結局ヒットといえるほど人気はでないままラインアップから消えていきます。

 

登場が30年早かった!? そんなSRV / ルネッサに今乗るなら・・・・・・

2007年の東京モーターショーで発表されたコンセプトモデル XS-V1 Sakura

現行当時からは想像もできないほど価値観が多様化した今ならば、もっとウケてたんじゃないか?という声は、現オーナー同士でもよく出てくる話。

ヤマハがコンセプトモデルで肩透かしをくらわせたことに落胆した、SRVファンやVツインスポーツ好きは多いことでしょう。

現実に今からSRV / ルネッサを手に入れるとなると、20~30年オチの中古から選ぶしかありません。

 

しかし、そろそろ本当に旧車ジャンルに入ってくる年代のバイクながら、現行当時からレトロ感溢れるデザインだったこともあって、現在ではむしろ20~30年オチ以上の旧車感を醸しているわりには新しいともいえ、デザイン的に旧車に興味はあるけど維持の面で不安がある・・・・・・という人には、比較的優しいバイクとはいえます。

無理にパワーを絞り出していないシンプルなものだけに、エンジンや駆動系の耐久性には定評がありますし、バブル期に上質感を狙って作られただけのことはある質感も、それなりに手入れの良かった個体であればそれほど酷くは色褪せてもいません。

 

不人気ゆえのタマ数の少なさはありますが、需要も少ないだけに度を越した高騰もありません。パーツ単位で見ると、美品純正マフラーや、レアな純正センタースタンドはものすごい値段がつくこともありますが。

これから徐々に慣れていけば、そのうちホンモノの旧車乗りになれるはずです。

 

性能は問わずスタイルに惚れているならオススメ

そんなSRV250の魅力に引かれるのは下記のような属性を持った人たちといえるでしょう。

 

・スピードの欲求を満たせるバイクを他に持っている、またはどんな状況であろうと制限速度は遵守する。

・500km/Dayを超えるようなロングツーリングをこなすためのバイクが別にある、または距離を稼ぐツーリングには興味がない。

基本的にひとりで走るほうが好き(とはいえ集団で走るのがストレスになるほど遅くはありません)。

・低速ワインディングでヒラヒラ切り返して走るのが好き。(見た目の車両キャラクタにそぐわないキャスター角24°25′ ルネッサは27°25′

・予算の都合で選択肢が250cc限定ながら、Vツインの鼓動と音を目いっぱい楽しみたい(ハーレー並みにロングなボア×ストローク比)。

・250ccに乗るなら燃費は良いほうじゃなきゃイヤダ。

・これからバイクいじりを覚えたい(ごく当たり前な構造で、特殊な純正工具を揃えないとできない作業はありません)。

・細かいところまで洗って磨いて眺めて悦に入るのが好き。

・「コスプレか!」と言われるくらいにクラシックなライディングファッションでキメてみたい。

・汎用パーツはつくか?じゃない、つけるんだという人(専用の社外カスタムパーツは壊滅的です。現行当時はヨシムラのボアアップキットもあったらしい)。

 

年式相応に中古購入時は注意が必要

あくまで一般論として、高負荷で酷使されたレーサーレプリカ系旧車よりは、当たり外れは少ないと思われます。

これは転倒キズや、腐食穴補修の溶接痕をどうにかしようとして悪化させた例(と思われる)

・チョイ乗りの多かった車両の純正マフラー(鉄にクロームメッキ)は、水抜き穴の位置が悪いのか、必ずサビて穴が開きます。底面はじっくりチェックが必要です。

・振動でナンバープレート下の反射板の根元が折れます。折れかけてないか、補修済か対策済であるか見ましょう。

・振動でウインカーの根元から折れることがあります。折れかけていないかチェックしましょう。

・振動で純正ミラー内部の防振オモリが外れてカラカラガラガラいうことがあります。

・やみくもにハンドルを交換してしまうと、手のひらが痒くなるような振動が出るので、入手時は純正ハンドル(防振バーエンドつき)のものを選んで正常状態を把握しましょう。

・決して制動力に優れたほうではありませんが、このバイクの速度域でブレーキが甘いと感じる場合、多くはフロントキャリパのピストン(小さいほう)の固着や、フォークオイルのヘタりが原因です。

・耳障りなほど酷い音がしていないかぎり、エンジンは大丈夫です。

クラッチのハウジングが摩耗した個体では、信号待ちでエンジンがかかったままニュートラルにシフトするのが困難になります(ハウジング交換するか、いったんエンジン停止すればOK)。

・92年式のみフロントのスポークが入手し難い特殊なもの(ナロースレッドタイプ)になっています。(純正は販売終了、特注でもステンレスでのジャストサイズを指定すると断られることあり)。

 

筆者にとっては生涯の相棒

他のリッターSSやツアラー、オフローダーは手放しても、これだけは爺になってロクに乗れなくなっても絶対に手放さない、私にとっての「アガリのバイク」として現時点で決定しているといえば、どういった性格のバイクか伝わるかと思います。

走ってヨシ、磨いてヨシ、眺めてヨシ、撮ってヨシ、イジってヨシですよ。遅いけど。

Kenn

Kenn

モノと生き物の境目が曖昧なちょっとイタい人。 バイク・クルマに限らず、作り手の情熱・魂の込もったモノに惹かれます。 DOS時代から名乗っているハンドルなので、某声優のほうが後発デスヨ