ラノベにも登場したバイク界のロールスロイス「ブラフシューペリアSS100」って知ってる?

ブラフ・シューペリア SS100

ある日、オフィスでの休憩時間のこと。バイク趣味とは接点もなければ、特に興味もないと思っていた後輩のタブレットの壁紙に目が止まりました。

こりゃまたえらくマニアックなバイクだな……と思って聞いてみると、ライトノベルを原作として、コミックやアニメなど幅広くメディアミックス展開されている「キノの旅」という作品の、準主人公「エルメス」だとのことでした。

 

そう、そのモデルともいえるのが今回の主役であり、世界的な名車として知られているブラフ・シューペリアSS100です。当時の標準を大きく凌駕した品質や性能はどのように生まれ、またどのような歴史的人物と関わりがあったのか紐解いていきます。

 

バイク界のロールスロイス

ブラフ・シューペリア SS100

ブラフ・シューペリアモーターサイクルズ社は、1919〜1940年の21年間で19モデル、3000台ほどを生産したイギリスの会社です。

生産台数もラインアップも当時のこととしても少なく感じますが、そのいずれもが手作り。しかも二つとして同じものがないといわれるほど顧客の要望を取り入れ、細部にわたってカスタマイズされていたことを考えれば、むしろ多いくらいでしょう。

 

さらに要求性能や美観を満たせない場合は、何度でも作りなおして顧客の期待に応えたともいわれており、その性能と品質は随一。ブラフ・シューペリアのバイクが「バイク界のロールス・ロイス」と評される所以であり、驚くことにロールス・ロイスからもそう名乗ることを許諾されていたという逸話も残っています。

なお、1920年代には公道で行われることも多かった世界最速を競う競技にも参戦しており、1924年に1929年、そして1937年と3度の世界最速車の栄冠に輝いています。1937年の記録は273km/hと現代のスポーツバイク顔負けの速さです。

 

20年先を行くハイスペックを誇ったSS100

ブラフ・シューペリア SS100

ブラフ・シューペリアの中でも特に名高いモデルがSS100です。そのスペックはというと……実は「これだ」といえるものはあまりありません。なにせ前述した通り顧客次第のところが大きいですから。それでも、ごく基本的なところを上げると次のようなものになります。

 

  • 空冷Vツイン OHV 998cc(サイドバルブのものもあり)
  • クレードルフレーム
  • リア・カンチレバー式モノサス
  • フロント・ダンパー付きスプリンガーフォーク
  • 前後リーディングトレーリングドラムブレーキ(放熱ディスク付き)

 

現代の常識から鑑みると「なぁんだ」という感じにもなりますが、およそ100年前のバイクであることを忘れてはいけません。

 

ブラフ・シューペリア SS100

ちなみにSS100はスーパースポーツ100の略称で、最高速が100mile/h(160km/h)に到達することに由来する名前です。これはSS100が生産されていた1924~1940年においては驚異的なもので、その20年後である1960年代のカフェレーサー達の間でさえ、100mile/hはひとつの壁として「トンナップボーイズ(※)」といった呼称としきたりがあったほどです。

 

現代に置き換えていえば、カワサキ Ninja H2R以上にインパクトのあるバイクだったと見て間違いありません。

もっとも、現代のH2RやMVアグスタの限定車等以上の価格的インパクトもあって、庶民は手を出すのみならず、目にする機会さえほとんどなかったのではないかと思われます(笑)。

※トンナップボーイズ(Ton-up Boys):トン=ton(たくさん)で、100mile/h以上で走る小僧たちという意味。100mile/h以上出したことのある証として白いマフラーを巻いていた

 

SS100はアラビアのロレンスも愛した

事故のダメージはそのままにロンドン帝国戦争博物館に展示されている、ロレンス7台目の愛車

ところで筆者の世代では、SS100で思い浮かぶといえば、やはり「キノの旅」よりも映画「アラビアのロレンス」かもしれません。

そのモデルとなった実在の軍人、トーマス・エドワード・ロレンス氏(※)はブラフ・シューペリアのバイクを何台も愛用していました。うち4台目としてSS100を1925年に入手して以降は同モデルを7台目まで乗り継いでいき、8台目を注文するのですが・・・・・・

7台目のSS100で走行中、自転車の少年を避けようとした転倒事故で脳挫傷を負い、そのまま急逝。8台目を手にすることはついぞありませんでした。

※:イギリス軍人としての任務ではあるものの、一般的にはアラブ諸国の独立に尽力した人物とされている。が、現代に続く中東の緊張を生み出したと解釈されることもある。

 

オークションでは数千万円があたりまえ!

ブラフ・シューペリア SS100

そんなSS100の現代における価値ともなればいわずもがな……とにかくとんでもない!1924年から1940年にかけて400台に満たない数しか作られていないわけですから、オークションでみることもほとんどありません。出品されることがあれば、落札価格は数千万円に達するのも当たり前なくらいです。

 

庶民には「欲しい」と思うことでさえ恐れ多いのかもしれません(笑)。

そのかわり、現役時代にはお金持ちのガレージに仕舞い込まれていたものが、今では博物館で目にすることはできるようになったというのは事実。そういう意味では少しだけ身近になってくれたといえそうです。

 

リバイバルモデルが出た!

1940年にはバイク生産から撤退、その後自社製バイクのリペア・レストアを業務として継続していたブラフ・シューペリア社ですが、1950年代半ばには経営を存続できず会社を畳んでしまいます

 

そして21世紀が日常となった2013年。約60年の沈黙を経て、「Since1919」を掲げたブラフ・シューペリア社が復活し、フランスのボクサーデザインチームの手による設計の新型SS100を発表しました。

2014年の発売までには紆余曲折あり、プロトタイプとして1920年代そのままの形を保ったまま現代化したモデル「SS101」も検討されたものの、最終的には旧モデルをモダンに再解釈したデザインの水冷エンジン搭載車が市販化されました。

 

かつてと同様に様々なカスタマイズにも応じてくれるようで、エンジン出力もその範疇なので、街乗りをメインとした緩やかな特性やとにかくサーキットでの速さを求めたチューンも実現させてくれることでしょう。もっとも、価格は5万ポンド(約700万円)~と、やはり庶民には高嶺の花のままです。

 

ミニチュアモデルだけでも新旧並べて「世界で最も美しいバイク」とも評されるSS100の美しさを堪能したいものですね。

BROUGH SUPERIOR MOTORCYCLES

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Kenn

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モノと生き物の境目が曖昧なちょっとイタい人。 バイク・クルマに限らず、作り手の情熱・魂の込もったモノに惹かれます。 DOS時代から名乗っているハンドルなので、某声優のほうが後発デスヨ