その見た目は伊達じゃない!フィールドを選ばない機動力が魅力のウラル・2WDサイドカー「GEAR UP」

効率性や機能性が最優先される世の中へのアンチテーゼか、古き良き味わいを残すアイテムが再び注目を浴びている。使い捨てフィルムカメラやレコード、カセットテープなどの人気再燃もしかり。

モーターサイクルシーンで、そんなトレンドにマッチしているのがここに紹介しているIMZ社製の「ウラル」サイドカーといえよう。

メカニカルなヴィンテージバイクの味わいとミリタリーなルックスを今に残すウラル。あえて趣味の世界ではスローなバイクライフを送ってみるのも有りなのでは?

ルーツは第二次世界大戦時の軍用バイク

第二次世界大戦前夜の誕生から75年以上ものロングセラーを続けるウラル・サイドカー。開発のきっかけは、荒れ地の多い戦場で機動力を発揮できる軍用車の必要性が迫られていたからだ。

シリンダーが横置きのボクサーエンジンは整備性も良く、サイドカー専用設計の頑強なシャーシと相まって、厳しい環境下において縦横無尽の活躍をみせた。その後、戦時下での攻撃を避けるために工場を首都モスクワからウラル山脈のふもとに移転することとなる。

量産車唯一の2WDサイドカー。カラーは人気のアスファルト

戦後はロシアの体制の変化にともない民営化を果たし、国内のみならず世界各国で320万台以上を販売するモーターサイクルメーカーへと成長。そして現在も同地で車輌やパーツの製造は続けられている。

冒険の相棒として、シティーコミューターとしても大活躍

今回紹介しているのはウラル・サイドカーの「GEAR UP」というモデル。レバー切り替えによる2WDパートタイム駆動の採用や各種装備が充実した、同社のフラッグシップ的なモデル

ノスタルジックなOHVエンジンながら、燃料供給システムにはECM&インジェクションを採用、3輪全てにディスクブレーキを装備するなど改良を重ね、現代の交通事情にマッチしたスペックが与えられている。もちろん2WDサイドカー専用設計となる頑強なフレームによる悪路の走破性は折り紙付きだ!

特筆すべきはサイドカーならではの安定感と積載力

“サイドカー”というと何か特別な乗り物というイメージがあるが、転倒のリスクが少ない分、年配のリターンライダーや初心者でも安心してエントリーできる。”バイク=転倒”という、ノンライダーの誰しもが抱くレッテル(負のイメージ)を払拭できるため、家族の理解も得やすいという副次的なメリットもある。

子供や奥さんを乗せてのファミリーツーリングはもちろん、本車のリアシート部分、側車のシート部分、キャリア部分を合わせれば広大な積載スペースを確保できるので、キャンプ用品や趣味の道具をめいっぱい積み込んで、ロングツーリングに出掛けるなんて使い方も楽にこなせる。

さらに2WDモデルのGEAR UPなら、バイク免許を持っていなくても普通自動車免許(マニュアル)で運転ができるという点も嬉しい限り。免許という大きな障壁を越えることなく、気軽にバイクならではの開放感を楽しめる。サイドカーなんて…と思っていたバイク免許無しの読者は、だんだん興味が湧いてきたころではないだろうか。

forRide編集部が実際に試乗してみた!

今回のインプレッションで使用したのは、先の通りウラルのフラッグシップモデル「GEAR UP」。

ウラル・ジャパン本社がある大阪市から撮影地となる亀岡市の「トライアルランド」までは約1時間ほどの道のり。往路の走行とトライアルランドでのデモンストレーションはウラルジャパン代表のボリヒン・ブラジスラーフ(以下ブラド氏)が努めてくれた。

その後は我々編集部が思う存分サイドカーを走らせる機会を与えてもらい(本格走行は初!)、このインプレッションを記すこととする。

まず、本車に跨った際のライディングポジションは、的確なシート高、ハンドル位置により、きわめてニュートラルな姿勢であることが好印象。これは疲労感が問題視されるロングツーリングでは重要な要素だ。

基本的な走行のための操作やスイッチ類の扱いは通常のバイクとほぼ同じ。パーキングブレーキやバックギアの装備はサイドカーならではの便利な機能といえよう。

まずはオンロード走行ということで、本車後輪のみの1WDをセレクト。スロットを開けて走り出すと、若干ではあるが側車の付いている右方向にハンドルが取られがちになることに気づく。しかし、これはサイドカー全てに言える挙動のひとつ。付属物である側車を軸に本車側が回転しようとする当たり前の現象なのだ。そのため、加速時はハンドルの右グリップを気持ち前に押し出す(左に切る)微調整が必要だが、ものの数分で慣れるだろう。

また、エンジンブレーキのみで減速すると、今度は逆に本車を軸に側車が左に回り込もうとするので、ハンドルの左グリップを前に押し出す(右に切る)感覚で微調整。つまり、挙動に相反させるハンドル操作のコツを飲み込むと自然に無駄な力を抜いて対処できるようになる。この基本さえマスターすればサイドカーを楽しむ”掴み”はOKという感じだ。

さらにコーナーの連続する山道へと進入。

バイクは車体を傾けて曲がるということが自然に体に叩き込まれているので、直立姿勢でコーナーに差し掛かると、横からのGに少々戸惑う。しかし、これもいくつかコーナーをクリアすることですぐに慣れてくる。「ハンドルで進みたい方向にしっかり舵を切る!」これがサイドカーでのコーナリングの鉄則なのだ。このあたりはトライクも同じだが、さらに左右アシンメトリーな構造のサイドカーでは右旋回と左旋回ではコントロールの感覚が多少異なる。

ややスピードに乗ったコーナーリングの場合、左に曲がる際には側車が踏ん張りを効かせてくれるが、右に曲がる際には側車が浮き上がるような感覚を覚える。実際には採用しているサスペンションの構造などにより、ある程度の粘りをみせてくれるのだが、その限界点を身に付けるまではコーナー進入時に意識的にスピードを抑えればより安心感が増す(側車に人が乗車しているときや荷物を積載しているときには状況が変わる)。

そんな多少の操作上のクセさえもサイドカーの奥深い魅力のひとつ。それだけ思うようにコントロールできたときの喜びはひとしおといえよう。

鼓動感がメカニカルな味わいを伝え、乗り手の気分を盛り上げてくれる750ccボクサーツインエンジンの特性は、まさにサイドカーとの相性抜群。ピークパワーこそ最新のエンジンと比べれば抑え気味な感はぬぐえないだろうが、低中域で粘りのあるトルクを発揮してくれるため扱いやすい。

また、4速ミッションは各ギアのパワーバンドが広いため、神経質にあくせくしたギアチェンジを行う必要もなく、ゆったりとクルージングを楽しむにはベストなセッティングといえよう。

ややハイギアード設定された4速(トップギア)は高速巡航も楽々とこなしてくれる。ブラド氏いはく、2名乗車時で120km巡航も可能なのだそうだ。

一方で気になる制動力だが、3輪ともににディスクブレーキを採用しているので不安感は一切無く、タッチも良好。右ハンドルレバーが本車のフロント、フットペダルが本車のリア&側車のホイールを受け持つシステム。

2WDを駆使したアクロバチックな走りを披露してくれるブラド氏

ブラド氏に習い、なぜか”片輪浮かせ”に挑戦するforRide編集部

いよいよGEAR UPの真骨頂とも言える2WD走行をトライアルランドの荒地でテスト。切り替えは本車右サイドにあるレバー操作のみでOK。車輌の挙動バランスを図るため側車側にやや斜めにオフセットされたシャフトドライブを介し、地面を噛む感触が乗り手にダイレクトに伝わってくる。

走り出すと1WDの場合とは違って直進性が増していることに気付くが、これは本車側リアホイールと側車側ホイールが同回転しているため。デフを装備していないので、旋回時にどちらかのタイヤが滑る現象がみられるが、実際には悪路の走破性はこの方が高くなる(4WD車でデフロックさせている状態と同じ)。

泥地や岩場、草地など様々なシーンを走ってみたが、その楽しさはまさに病みつき! 安定した機動力のおかげで普通なら踏み込めないフィールドを疾駆できる感動は、ウラルのみがもたらせてくれるものといえよう。

自然の奥深い領域に踏み込めるのがウラル・サイドカーの最大の魅力

2WDモデル「GEAR UP」のさらに細かな仕様を見ていこう

パフォーマンスに重要な装備、便利な機能を満載したGEAR UP。ここではそのディテールを細かく紹介してみる。

エンジンは空冷4ストローク OHV4バルブ水平2気筒。通称「ボクサーツイン」。750ccで最大出力は41馬力。粘りのあるトルク特性が特徴だ。クラシカルなエンジン特有の鼓動感も楽しめる。

エンジン始動はセル、キック併用式。キックペダルが横に倒れてくるところがマニアの心をくすぐる。

ブレンボ製のキャリパー&放熱性に優れたフローティングディスクを装備。3輪ともディスクブレーキを使用しているので、制動力は申し分ない。フロントサスはサイドカーならではの横荷重に強いアールズフォークを採用

ヘッドライトナセルと一体でスピード表示のみとなる電気式アナログメーター。各種警告灯もまとめられているので視認性が良い。

本車側ヘッドライトと側車側ライトを2灯点灯すれば夜間の対向車からの視認性もアップする。これは相手に車幅を知らせるための重要な要素。

本車の右サイドにある1WD→2WDのセレクトレバー。切り替えは停車時に行う。操作はいたってシンプルかつ簡単だ。

肉厚なシートはロングツーリング時のお尻の痛みを軽減してくれる。2名乗車も余裕でこなしてくれるサイズ。サイドのステーが荷物の積載をサポート。

メガホンタイプのサイレンサーがクラシカルな風貌にマッチ。静音性をキープしながらも小気味よいエキゾーストノートを奏でてくれる。

ハンドルの左側にパーキングレバーを装備。傾斜地や不安定な場所でしっかりと車輌を停め置くことができる。

タンク上のグローブボックスは小物を入れるために重宝しそうだ。こちらは付属のキーによる開閉式。

スペアタイヤを搭載。3輪全てが同サイズなので、この一本で対応可能。修理に多少手間のかかるチューブタイヤ仕様なので、この装備は気持ちに余裕が生まれる。キャリアの使い勝手もすこぶる良い。

側車後方のスペアタイヤ下にはレバー操作で開け閉めする大容量のカーゴスペースを確保。もちろん施錠も可能だ。付属の専用メンテナンスツールが収納されているが、スペースに余裕があるのでヘルメットやキャンプ用品の積み込みも可。ちなみに、見ての通りフルフェイスヘルメット2つ+αは余裕で収納できる広さだ。

側車側シートはホールド感が良く、足を伸ばせる余裕のサイズがうれしい。また、ウインドシールドは取り外しも可能。

雨水溜まりを防ぐための防水シートカバーも標準装備される。

シャフトドライブはサイドカー特有の挙動を修正するために真横ではなく、やや斜めに側車側へ伸びる。2本のラバーマウントによって乗り心地はいたって良好。

関西エリアに住んでいる方はショールームに足を運んでみよう

ロシアのモーターサイクルメーカーIMZ社。そのウラル・ブランドの日本総代理店としてサービスを展開しているのが、大阪にお店を構えるウラル・ジャパンだ。もちろん試乗の相談にも快く対応してくれる。

店内ではオプションパーツやURALのロゴを冠した、おしゃれなオリジナルグッズの販売も行われているので要チェック!

代表のボリヒン・ブラジスラーフ氏(右)とメカニック担当の浅田氏(左)。ユーザーの様々な要望に応じてくれる。

ウラジオストク生まれのボリヒン・ブラジスラーフ氏。愛称は”ブラド”さん。地方ディーラーで経験を積み、昨年ウラル・ジャパンの代表に就任。日本文化に造詣が深く日本語も堪能だ。

ウラル・サイドカー GEAR UPのスペック

  • エンジン:空冷4ストロークOHV4バルブ水平対向2気筒
  • ボア×ストローク:78×78mm
  • 排気量:749cc
  • 最高出力:41PS / 5,500rpm
  • 最大トルク:42Nm / 4,300rpm
  • 圧縮比:8.6:1
  • 燃料供給方式:EFI
  • 燃料タンク容量:19L
  • 変速機:4段リターン(+後1段)
  • 始動方式:セル、キック併用
  • 全長×全幅×全高:2,510×1615×1,380mm
  • シート高:810mm
  • 乾燥車両重量:330Kg
  • 車両価格:214万円(税込)

アドベンチャーマインドを駆り立てるライブラリー

バイクとオープンな開放感は同じなれど、独自のテクニックを駆使して乗りこなすのがサイドカーの奥深さ。きっとそこにはバイクとは違う景色が見えてくるはず。その楽しさにすっかり魅了されてしまったforRide編集部。

ウラルをパートナーに新たな冒険のストーリーを創るのはアナタです!

参考-URAL JAPAN


■ウラルジャパン

  • 住所大阪府大阪市港区田中1丁目15−1 プラザ1
  • TEL06-4395-5685
  • URLhttps://www.ural-jp.com
forRide編集部

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乗り物(Ride)を軸としたライフスタイル提案型の情報を発信する「フォーライド編集部」です。 乗り物のある生活、楽しみ方を提案し続けます!