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バイクは”3密”を避けた移動手段として見直されているとの報道が目立ちますが、実はそんなコロナ特需などではなく、シンプルにバイクという趣味自体のファンが増加傾向にあるという明るい兆しも見え始めています。
一方で、ユーザーが増えたことに比例してバイク事故が増えているのも事実。そんな今だからこそ、私たちの身体を保護してくれるモーターサイクルウェアの存在を改めて見つめ直すべきではないでしょうか。
そこで今回は、2016年に実施されたモーターサイクルウェアにおける面白い取り組みについてご紹介したいと思います。
ロアーズオリジナル×文化服装学院による良質企画
今から5年前の2016年、東京は麻布に店舗を構えるアパレルブランド「ROARS ORIGINAL」の髙橋さんによって母校でもある服飾専門学校・文化服装学院に提案された企画、その名も「モーターサイクルのウェアを作ろう!」。
読んで字の如く、モーターサイクルウェアの作り方について学ぶ特別講義なわけですが、文化服装学院の生徒(高度専門士科)を対象に参加者を募り、バイク経験の有無に関わらず、自由な発想で実際に制作してみようという企画です。
ちなみに文化服装学院について少し余談を。
文化服装学院とは?
文化服装学院は、新宿の甲州街道沿いにある服飾専門学校です。その歴史は古く、大正8年に並木婦人子供服裁縫店を経営する「並木伊三郎」によって開校されました。
数ある服飾専門学校の中でも名門中の名門で、出題される課題の多さや授業レベルの高さは日本でもトップクラスを誇ります。実際に、日本のみならず海外でも活躍する有名ブランドのデザイナーやソーナー、パタンナーは文化服装学院卒が多いです。世界で活躍するデザイナーを例としてあげると、コシノ姉妹や菊池武夫さん(TAKEO KIKUCHI)、高田賢三さん(KENZO)、山本耀司さん(Yohji Yamamoto&Y-3)、高橋盾さん(UNDERCOVER)、落合宏理さん(FACETASM)、NIGOさんなど、錚々たる面々が名を連ねます。
企画「モーターサイクルウェアを作ろう!!」
さて、話を企画内容に戻します。
まず初めに、高橋さんを講師として「自分の好きを生かしたビジネスの可能性」と題した特別講義を2回行い、それから「モーターサイクルのウェアを作ろう!!」企画に参加意思のある生徒を募ったとのこと。
講義の内容は【学習・体験・制作・展示】と4つの項目に分けて進められ、生徒が自分で制作したモーターサイクルウェアを文化服装学院内で展示することでが本企画のゴールとされました。
カリキュラム
- 第1回「モーターサイクルを学ぼう(座学)」
- 第2回「モーターサイクルに触れてみよう(体験)」
- 第3回「モーターサイクルウェアを作ろう」
- 第4回「モーターサイクルウェアを展示して見てもらおう」
第1回「モーターサイクルを学ぼう(座学)」
参加者の中にはバイク好きだけではなく、これから免許取得を目指している子や、まだ興味が出ていない子もいました。少しでもモーターサイクルカルチャーを理解してもらうため、普段何気なく着ているライダースジャケットの歴史から、機能や製法などを学びます。
講義の中で髙橋さんと生徒の距離も縮まり、雑談で「将来バイク乗りたいです!」や「免許欲しい!」などバイクへの興味を示した生徒も多かったようでした。
第2回「モーターサイクルに触れてみよう(体験)」
2回目はロアーズオリジナルにて、生徒が描いたデザイン画を見ながらデザイン相談の回となりました。「このデザインにした理由は~」「生地をこんな風にしたい~」など、生徒の様々な意向を聞きながら、髙橋さんの知見に基づいた的確なアドバイスをし無事終了。
と、一般的な復職専門学校の講義であればここで終わってしまうところですが、“本物のモーターサイクルに触れてほしい”という髙橋さんの強い思いで、ミニサーキット(ゴーカート場)へ舞台を移し、ヤマハ協力のもと様々なジャンルのバイクにタンデム乗車体験をしてもらいました。さらに試乗後は、生徒が制作したトワル(サンプル)をモデルに着させて、実際にイメージに合うバイクに跨りながら調整。普段はモデルやトルソー(胴体部分のみのボディ)を使って洋服を仕上げている生徒にとっては、実際に手を伸ばしたり、バイクに跨って足を曲げたりする調整は新鮮だったのではないでしょうか。
第3回「モーターサイクルウェアを作ろう」
デザイン相談やバイクの試乗会を終え、3回目の講義では、生徒それぞれが思い描く、理想のモーターサイクルウェアを、実際に制作する工程となりました。文化服装学院内で自分が制作したモーターサイクルウェアを展示するという最終目標に向けてラストスパート。
淡々と書いていますが、実際に参加した生徒がこの制作工程に最も時間を費したことは言うまでもありません。
第4回「モーターサイクルウェアを展示して見てもらおう」
そして、ついに半年以上かけたこの企画も無事に完成の日を迎えました。プロのカメラマンを迎え、生徒が作ったモーターサイクルウェアとの写真撮影があり、学校内でバイクと共に展示。様々なバイクメディアが取材に訪れるなど、大盛況のうちに幕を閉じたとのことでした。
髙橋さんのモーターサイクルウェアに対する情熱と、試乗会や車両を手配してくれたヤマハの協力、そして何より、企画に参加した生徒の熱意によって、この企画が素晴らしいものに仕上がったのでしょう。
しかも、この企画を通して、参加した生徒の中には免許を取得してバイク乗りになったり、モーターサイクルウェアメーカーに就職した生徒もいたとのことで、高橋さんの業界に対する貢献度は計り知れません。
2020年・2021年はオンラインによるリモート講義
なお、2020年・2021年はコロナ禍ということもあり、オンラインによるリモート講義だったとのこと。
バイク業界だけではなく学生の未来を担う本当に素敵な活動ですので、是非とも、コロナ終息後には完全復活してほしいものです。
自分の”好き”を生かしたビジネスの可能性
参加した生徒にとっては、モーターサイクルウェアという特殊な機能服の世界に触れ、新たな発見や自分の視野を幅を広げるきっかけとなったのではないでしょうか。
また、モーターサイクルウェアの業界においても、柔軟なアイデアを持った有望なデザイナーが現れるきっかけにもなり、非常に有意義な企画だったのではないでしょうか。