この記事の目次
新年、明けましておめでとうございます。2023年が全ライダーさんにとって良い年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。
さて、新年早々に物騒な話題で大変恐縮ではありますが、モーターサイクルも内燃機関の時代が終わってしまうのではないかと、まことしやかに囁かれています。そこで期待されているのが電動(EV)なわけですが、車体スペースに限りがあるモーターサイクルではEV化は容易ではありません。そこで期待されているのがハイブリッド化です。
NinjaとZが電動化!? カワサキが世界初公開となるハイブリッドモデルと2023年市販予定の電動バイクを展示【EICMA2022】
カワサキが昨秋のミラノショーで発表したことを覚えている方もいらっしゃることでしょう。モーターサイクルのEV化は特にシティコミューターで進行中ですが、中型・大型のモーターサイクルの排ガス規制対応として期待されるハイブリッド化の現状を調べてみました。
シティコミューターは排ガス規制にEV化で対抗。中型・大型はどうする?
そもそも何故今モーターサイクルが電動化しているのかといえば、それは排ガス規制への対応です。Euro5(日本版は令和2年度排ガス規制)に対応した結果、多くの魅力的なモデルが販売中止の憂き目にあいました。
日本人バイカーの多くが教習所でお世話になった名車ホンダ「CB400 Super Four」が生産中止に追い込まれてしまったことが、その象徴と言えるでしょう。
そこでメーカーは、シティコミューターにおいては徐々にEV化を進めています。カワサキは2023年中に「Ninja」と「Z」の小排気量モデルのEV化を公表しています。ヤマハは「e Vino」を既に市販していますし、ホンダも遂にヨーロッパにおいて電動スクーターの一般販売を開始しました。
BMWは「CE04」を市販しています。航続距離の短いモデルであれば、充分EVで対処できそうなのです。
ところが、次の排ガス規制であるEuro6(二輪車版)は2025年以降に始まるといわれており、これに中型・大型のモーターサイクルが対抗する手段が明確ではないのです。そして一部メーカーが期待しているのが、ハイブリッド化であるようなのです。
カワサキは2024年にハイブリッドモデルを市販化する!
いよいよ本題。カワサキがミラノショーで発表したハイブリッドモデルです。カワサキのプレスリリースには以下のように記載されていました。
2024年の市販化を目指すハイブリッドモーターサイクルのプロトタイプ。自社開発のストロングハイブリッド型エンジンを搭載し、燃費の良さと高い走行性能を両立しています。通勤通学からスポーツ走行やツーリングなど走行シーンに合わせ、モーター走行またはモーターとエンジン併用走行の切り替えが可能です。
同社の技報(川崎重工技報183号 2021年10月発行)と、2021年10月に公開されたプロトタイプの情報から、クルマ用ハイブリッドシステムとして普及しているのと同じ48V電気モーターを搭載した、パラレルハイブリッドシステムが使われていることが分かります。
また、昨秋に開催されたミラノショーにおいて、ドイツのヴィテスコ・テクノロジーズ社が、ハイブリッドシステムを公開しました。このヴィテスコ・テクノロジーズというのは、自動車部品大手コンチネンタル社のパワートレイン部門が分社化されて誕生した企業であり、やはりクルマ用の48V電気モーターを使用したシステムでした。
ベースとされていたのはハスクバーナ「Vitpilen 401」です。ヴィテスコ・テクノロジーズのハイブリッドシステムは約20kgですが、それでも最大トルクは60Nmにググっとアップします。アシストなしの「Vitpilen 401」の最大トルクは37Nm / 7,000 rpmですから、2倍近くのトルクを発生することになります。また電動モードで最長30km走行できることから、都市部のエンジン搭載車侵入禁止区域は電動で切り抜けるという使い方も可能となります。
ヴィテスコ・テクノロジーズは発進時を完全電動にすることで不慣れなライダーをサポートしたり、後進が可能になることから安全性と機能性も高まると主張しています。さらに、このシステムで必要となる追加コストは1,000ユーロ未満であるとのことですから、中型・大型バイクへの搭載が進んでもおかしくありません。
最終目標が二酸化炭素排出を差し引きゼロにすることである以上、エンジン搭載車が絶滅するのは間違いありませんが、少しでも長く楽しめるためにも、ハイブリッドシステムの普及に期待したいところです。