この記事の目次
1980年代を代表する大友克洋監督の映画 AKIRAに登場した「金田のバイク」。30年以上経つ今でも、”未来のバイク”としてイメージされるアイコニックなマシンです。
その人気は世界的なものでアニメや映画、そしてバイク業界に与えた影響は計り知れません。2018年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」にもヒロインの愛車として登場しますし、これまでも幾度となくレプリカ制作プロジェクトが行われてきました。バイクメーカーでもファンが多いのか、デザインをリスペクトした大型スクーター ホンダ NM4や、高級電動バイクzecOO(ゼクー)などの市販車も製造されたほどです。
中国人デザイナーのJames Qiuさんもそんな金田のバイクに魅せられた一人だったのでしょう。現行のドゥカティをベースに、かなり現実的なコンセプトアートを完成させてしまいました。
ディティールアップされた”金田”のコンセプト
それが、QiuさんのCG作品「AKIRA」。未来感あふれるデザインと低く構えたスタイリングは金田のバイクそのものです。むしろエアインテークやモールドなどの細かなディティールが追加されている分、メカとしてのカッコよさは格段に向上しています。
どっかりと背もたれに預けるライディングポジションだってもちろん再現。肝心のシートはバイクとクルマを折衷したような独特の形状で、レカロ製を想定しています。左右のバーやタンクも相まってかなりホールド感高めの姿勢で乗車できることでしょう。
ちょっと太めな人は挟まらないように気をつけなければならなそうですが、そこはAKIRAの主人公 金田君のように赤い革ジャンが似合う体型にしてから乗りたいところ。いつまで経っても”健康優良不良少年”でいたいですから。
未来感の象徴ともいえるコックピットに眼を向けてみれば、対障害物用レーダーやオートナビシステムと思しきディスプレイがずらり。表示の一つひとつがなんなのか確かめているだけでもワクワクしてしまいます。
原作に忠実ともいえるエンジンの搭載
特に注目したいのが、車体中央で存在感を放っているエンジンとマフラー。金田のバイクをちょっとでも知っている人なら疑問に思うことでしょう。なにせ劇中で「セラミックツーローターの両輪駆動」と呼ばれていたように、金田のバイクはインホイールモーターの電動バイク。本来なら不要の機関です。
ところが後輪はおろか前輪を見ても、チェーンやドライブシャフトが見当たりません。いったいどうやって動力を伝えているか不思議です。コンセプトアートだから謎パワー?いえいえ、せっかくだから考察してみましょうよ。
おそらく「発電はエンジン、駆動は前後ホイール内蔵のモーター」とするのが適切でしょう。日産のEVが採用しているe-Powerをはじめとしたシリーズハイブリッドに近い形式といえそうです。
実は、これも金田のバイクに忠実な部分だったりします。設定をよーく見直してみると、電力を担っているのは常温超伝導「発電機」。これが漫画版だとときどきガソリン車のような表現のあった理由なのかもしれません。
もっとも発電機でしかないエンジンに4本出しの、それもMotoGPやスーパーバイク選手権で御用達のテルミニョーニマフラーが必要かはちょっと疑問ですが……。でも、エギゾーストの迫力を考えればむしろアリです。やっぱりカッコいいは正義!
タンクとフレームに面影が残るベース車「ドゥカティ X Diavel」
ちなみにコンセプトですが、前述した通りベース車両も設定されています。それが、ドゥカティのクルーザーX Diabel。たしかに度合いは違いますが、ロー&ロングなスタイリングは一緒です。
なによりエンジン上部にチラ見えしているフレームはドゥカティ伝統のトレリスフレーム。さらにタンクの形状も一緒ですし、ここを見れば納得です。とんでもない構造変更をしなければなりませんが、意外といい改造ベースになるのかも?
CGとはいえ、金田のバイクへの愛情がひしひしと伝わってくるJames QiuさんのAKIRA。ここまでくると実車に乗ってみたくなります。腕に覚えのあるビルダーさん、ぜひ挑戦を!
完成してもピーキー過ぎてお前にゃ無理?雰囲気が楽しめればそれでいいじゃない。