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日本酒の起源は諸説あるが、およそ2000〜2500年前(弥生時代)と言われている。言わずもがな、アルコールは産地や材料、製法によって味が異なる。そこからの話、飲む温度によって口当たりが違う、器によってまろやかさが変わる、料理との相性が無限に広がる、これが日本酒の他のアルコールとの違いであり奥深さでもある。
“奥”つながりということで、今回は”奥の細道”へ、由緒ある酒蔵を求めてひたすら北上することにした。
女性杜氏がいる酒蔵:月の輪酒造(岩手県紫波郡)
酒造りを行う者を蔵人(くらびと)と呼び、その長を杜氏(とうじ)と呼ぶ。酒造りが産業化され、力仕事が多くなると男手が重宝され、果ては”女人禁制”の職場となってしまった歴史があった。
全国には多くの流派を持つ杜氏が次々と生まれていったが、三大杜氏と呼ばれる一角「岩手県の南部杜氏」発祥の地がここ、月の輪酒造のある岩手県紫波郡紫波町なのである。
岩手県の盛岡から更に北へ約40分。国道から一本奥に入った道沿いに月の輪酒造の建物はひっそりと佇む。7代目当主の娘さんが杜氏という全国でも珍しい蔵である。
現在はコロナ禍ということもあり酒蔵見学はお休みしているものの、裏につながる販売店で、女性杜氏ならではのジェラート等を食べることができる。
東北が近くなった!
長距離ツーリングというと、決まって痛むのはライディングポジションによる局部(首、手首、腰、足など)へのしわ寄せだ。日常ではあまりとらない姿勢を長々と続けるので仕方がない。
仕方ないでおさまらないのがシート。1〜2時間乗ってサービスエリアで休憩しようとすると、お尻が痛くて”おじいさん歩き”になることもしばしば。ところがどっこい、今回の相棒であるヤマハ・TRACER9 GT(トレーサーナインGT)のシートはまるで質の良いベッドのようで、3日間2,500キロ走行でも、一度もお尻は痛くならなかった。こんなバイクは初めてだ。
高速走行では、6速からの加速も十分なので、クルーズコントールで巡航速度をセットしたら、後は前のクルマとの車間距離に気を付けながら、時々追い越しをかけるだけだ。高速走行は燃費も急上昇し、20km/Lは軽く超えるので400km近くまで走れる。
しかも、TRACER9 GTの空力設計は実に優秀で、まるで打たせてアウトを取るピッチャーのように、上手い具合に風を受けながら、気付いたら「青森まで100km」の標識を見る所まであっさり来てしまった。
登録有形文化財:末廣酒造(福島県会津若松市)
日本には例えば旅館業、服飾業、土木建築業など様々な業種があるが、実は100年以上続いている業種で一番企業数が多いのが、清酒製造であることは余り知られていない。
従って、現存し訪れることのできる蔵元となると、当然ながら趣深い建物が多いのである。
米のでんぷんを麹菌(カビの一種)の働きによって糖類に変化させ、そこに酵母を加えることで炭酸ガスと共にアルコールができる。
この酵母を培養するために、米をすり潰す山卸(やまおろし)という工程を要するのだが、昔の米は硬く大粒だったため非常に重労働であり、時間もかかることによって、不要な微生物が繁殖するリスクが多かった。
そこで山卸がいらない山廃(やまはい)をはじめたのがこの末廣酒造の嘉永蔵であった。
ここは入った途端、開放的な吹き抜けの空間が現れ、5つの蔵と木造三階建ての住居を見学することができるのも特徴。
2018年には、嘉永蔵の中にある合計9箇所、つまり建物のほとんどが登録有形文化財として認定されており、お酒以外に歴史的建造物の見学としても訪れる価値のある場所だ。
備えあれば憂いなし。それがバイク旅
あれやこれやと心配してしまうのが長距離ツーリング。
カッパも入れておきたい、東北だから上着も予備で持ちたい、雨が激しい時にはレインブーツもあったらいい、なんてキリがない。しかし、そんなわがままにも応えてくれるのが両側のサイドケース。側面には開けた瞬間に荷物が飛び出してしまわぬようバンドが付属しているほか、底面にも受け皿があり荷物が安定しやすい。また、開閉がボタン式である点も地味に便利だ。
出し入れの多いカッパや予備ジャケット類は左のケースに入れ、右には日程分の着替え。トップケースに増えていくお土産を入れていくのも良いだろう。
走りの方はABS、トラクションコントロール、クルーズコントロールと快適な旅に文句なしの完璧装備だ!
純米酒しか作らない蔵元:小原酒造(福島県喜多方市)
「牛に音楽を聞かせて育てると牛肉が美味しくなる」と聞いた当主が醪(もろみ)にクラシック音楽を聞かせたら、発酵が進んだそうだ。
お酒のブランドも「蔵粋」と書いて“くらしっく”。300mL×5本セットは「アマデウスセット」、季節限定商品は「マエストロ」とクラシック音楽にちなんだネーミングがユニーク。
こだわりは音楽を聞かせて発酵するだけではなく、純米酒しか作らないこと。
敷居をまたぐと、土間の向こうに昔ながらの畳の上で迎えてくれる笑顔にホッとする。
周辺を見渡すと、家屋兼酒蔵という造りの古民家が建ち並び、現在では店舗として活用されている所も多いため「蔵のまち」と呼ばれている。通り一体に雰囲気のある建物が建ち並び、素晴らしい景観を保っている。いつかまた訪れたい。
【終了】ちょっとお裾分け読者プレゼント
今回、相棒であるヤマハ・TRACER9 GTと共に東北酒蔵旅を巡り、筆者が特に美味しいと感じた日本酒、月の輪酒造「生もと純米 美山錦(720cc)」を一名様にプレゼント!
読者プレゼントにまで気が回るほど快適な旅ができたのもすべて、相棒のおかげである。是非とも、相棒の開発者とはいつか東北の銘酒を酌み交わし、お礼を述べたいものだ。
【読者プレゼント当選者のお知らせ】
当選者:N・M様
ご当選おめでとうございます!