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スーパーカブといえばメッキのマフラーと白いカバーなど、誰もが知っているあの形だと思いますが、実はあの形は商標登録されているのです!
商標登録と言えば不二家のペコちゃんやコカコーラの容器など、パッと見て「あっ!これだ!」とわかるようなものはもちろん、認められるにはたくさんのハードルを乗り越えなければいけません。そんな厳しい基準の商標登録が世界で初めて二輪車として登録されたのもカブなんです!
工業製品としても極めて珍しい事例と言われるほどのこの事例は、1958年の開発から50年以上も大きな形を変えることなく続いていた証でもあります。
そこで、もはや今後もこの形を変えることなく老若男女問わず愛され続けるスーパーカブのあの形のエピソードをご紹介しますね!
そもそも商標登録とは?
そもそも商標登録とはどういうものなのでしょうか?商標登録とは、特許庁による登録を経て、その商品の商標権を生じさせる権利のことを言います。商標権は世界各国でも採用され、認められれば唯一無二の存在とし、独占して使用することができます。
しかしその分、商標登録するためのハードルは非常に高く、申請してもなかなか認めてもらえないハードルの高さが尋常ではありません。商標登録されているものといえば、
- クロネコヤマトの「猫」の図形
- ナイキの「レ」の図形
- ケンタッキーの「カーネルサンダース」
- 不二家の「ペコちゃん」
- コカコーラの「ビン」の形
基本的には文字や図形、記号などといった平面のものが通りやすいとされていますが、コカコーラのビンなどといった立体的なものもあります。商標とは言葉として認識されるものだけでなく、目で見たり音や動きなどといった直感的にわかるものが採用されます。
この「直感的にわかるもの」のハードルが高いことが商標登録の厳しい部分で、幅広い世代の誰が見ても「ああ、〇〇だな!」と分からなければいけません。車で商標登録を取っている例もありますが、その内容を確認してみましょう。
スーパーカーで有名なフェラーリも商標登録を取得しているものの、「車体の形」そのものが認められたというより、「跳ね馬のエンブレム」が入っているから認められているそうです。
確かに跳ね馬のエンブレムを見たら、それだけでフェラーリってすぐわかりますからね!ということは、あのフェラーリでさえ形だけで商標登録を取るのは厳しかったと考えられます。
そう考えると、スーパーカブの商標登録は「ホンダのエンブレム」があるから認められたのではなく、スーパーカブの形そのものが認められて登録されているため、いかにこの形がたくさんの人に認知されているかがわかりますね!
そんな伝統あるスタイルのスーパーカブのデザインはどのようにできたのでしょうか?ちょっと開発エピソードを見てみましょう!
カブの形はスケッチ段階で「おっ!いいじゃねえか!」の一言で決まった
当時スーパーカブのデザイン開発は、実はデザイン段階での検討が存在せず、すぐに1分の1の実物モデルの製作を開始していました。これは創業者の本田宗一郎さんが現物主義を徹底していたからでもあります。
1分の1モデルは粘土で作られたクレイモデルといい、様々な検討をしながら少しづつ手を加えられていきます。
スタッフたちが四苦八苦しながらクレイモデルでカブを製作していた時、宗一郎さんがやってきて、「風はこう来て、こう飛ぶのだ」と言ってフロントカバーのサイズが小さくなるようにバッサバッサと削っていき始め、モデルの中の芯となっている金網に指を刺してしまうなんてこともあったそうです。
それでも宗一郎さんは血だらけになりながらも夢中でバサバサと削っていくもので、スタッフが慌てて診療所に絆創膏をもらいに走っていったというエピソードも。
なんといっても社長の宗一郎さんが一番夢中でカブを作っており、自分の手を汚すのもお構いなしに関わっていたため、周りのスタッフにもその情熱が伝わり、より良いものができていたそうです。それくらい、宗一郎さんもスーパーカブのデザインにも大きく関わっているんですね!
実は随所に斬新なデザインが採用されている
カブのデザインも当時斬新なデザインを随所に採用してます。例えばフロントフォークのデザインは誰もが知っているディズニー映画の「バンビ」の中で疾走するバンビが急停止して前足が伸びる様子のイメージでまとめられているようです。
また、ハンドルのデザインは翼の形をイメージしており、製作には特殊な加工が必要でした。当時の技術では極めて難しかったのですが、女性や仕事で使う人が乗ることを意識していため、カブに乗る人が自然なライディングスタイルとなるよう一切妥協せず開発されました。
さらに初代のスーパーカブは水色を基調としています。その理由として、日本人は海に囲まれて生きているため、空や海の色といった親しみやすさを込めて考えられたそうです。
当時のバイクのイメージは男の人が乗るようなイメージだったのですが、開発段階で万人に愛されるようなコンセプトで作られていたため、現代でも高い人気を維持し続け商標登録に至ったと言っても過言ではありません。
当時のエピソードを聞いている限り、誰もが知っているこの形はなるべくしてなったと言う感じですね!本田宗一郎さんや藤沢武夫さんが「誰からも愛されるバイク作り」を考えたからこそ、現代でも通用するのでしょう。
次回は、国内で大成功したカブがいよいよオートバイ市場のアメリカに進出するエピソードとなります!今でこそ日本国内だけでなく東南アジアや北米、ヨーロッパからも高い人気を誇っていますが、初めから成功したわけではなさそうですね。
【過去のカブエピソードはこちら!】
・カブの伝説エピソード特集【壱】カブ開発を言い出したのは本田宗一郎さんではなかった!?