1980年代のオートバイが懐かしく振り返られてしまう現代。とは言え、コレクションやレストアの対象になるのは、70年代以前が中心かと思います。
ところが今回ご紹介するのは80年代のレーサー、それも当時のプライベーターが製作したレーサーのレプリカ。フレームキットから製作したのだそうです。
Moretti Ducatiとは?
Morettiとは、1980年代にイタリア国内のレースシーンで活躍したプライベーターです。彼はドゥカティから供給されたエンジンを搭載する車体を製作し、レースに参戦していましたが、いかんせんプライベーターゆえ、相当にマニアックな存在と言えます。
そしてこの「Moretti Ducati」を製作したのがカナダのHewitt氏。驚いたことにイタリアでは今でも「Morettiフレームキット」が販売されており、ドゥカティ「Pantah(パンタ)」のカスタム車両製作を考えていたときにそれを聞き付けて購入したそうです。
ちなみに「Moretti Ducati」のベースとなるのは、同時代世界中のサーキットで活躍したDucati 「TT2」。こちらについても軽く紹介しましょう。
ドゥカティ「TT2」
こちらがドゥカティ 「TT2」。トレリスフレームを初めて採用したドゥカティのレースマシンとして歴史に名を残す名車です。
1981年にパンタ用をベースに開発された2気筒エンジンを、わずか約7キロの超軽量フレームに搭載。フロントフォークはマルゾッキ製、リアサスペンションはパイオリ製カンチレバー式モノショックを採用していました。
1981年シーズン、「TT2」を駆るトニー・ラッター選手が世界タイトルを獲得。マッシモ・ブロッコリはイタリアTT2タイトルを獲得しました。また、マン島でも1位2位を独占しました。
1980年代のレース史に名を残すイタリアの名車と言えば、この「TT2」。このレプリカを製作するなら、よくわかるのですが…。
Moretti Ducatiのディテール
Morettiフレームキットに含まれているのは、フレーム、スイングアーム、フェアリング、ガソリンタンクといった骨格。それ以外は全て、Hewittさんが揃えて行きました。
フレームとスイングアームはTIG溶接により接合されたクロモリ製。そのデザインは、ステアリング・ヘッドからリアを一直線に結ぶ、本家とは一味違ったトレリスフレーム。
トレリスフレームは、強度計算をしやすく軽量に仕上げられるため、多くのプライベーターが採用してきた経緯があります。
キャブレターはデロルト41mmをセレクト。時代背景を考慮したチョイスが素晴らしい!
エンジン本体はドゥカティ 「パンタ」用を前提に作られたフレームキットですが、パンタ自体が非常に高額なため、同エンジンを搭載するカジバ「Alazzurra(アラズーラ)」用を搭載してチューニングしました。排気量を750ccにアップし、キャリロ製コンロッドやレーシングカムの装着、クランクの軽量化などが施されています。
いやはや、マニアックですね〜。
性能向上に対応するため、フロントフォークはドゥカティ 「851」用をチョイス。マルゾッキの当時モノは手に入りませんし、性能面を考慮しても妥当なチョイスでしょう。同様の理由から、リアショックはオーリンズが使われています。
前後ホイールは、当時のカンパを模したデザインのマビック製マグホイールを採用。トレリスフレームの細身な車体によく似合っています。
バックステップはフレームキットに含まれているそうです。
1980年代のイタリアのサーキットには、こんなに美しいレーシングバイクで表彰台を目指していたプライベーターが居たのですね。そして、その魅力を今に伝えるべく、レプリカを一から製作してしまう趣味人が居るという…。バイクの世界は実に奥深い。勉強になりました!
この美しいレーシングバイク「Moretti Ducati」は、現在はカナダのバイカー用アパレルを扱うショップ”Town Moto”に展示されているそうです。そこのアパレルも必見ですので、ぜひ”Town Moto”のウェブサイトも覗いてみてくださいね。