最近は無鉛プレミアムガソリン(いわゆるハイオク)が給油指定されているバイクも増えました。
レギュラーとの価格差は、リッターあたりで概ね10円前後といったところでしょうか?
どっちを入れるか、入れていいのか悪いのかは、大手のネット掲示板や質問サイトでは定期のネタとなっておりますね。
今回の記事では、レギュラーとハイオクにどういった違いがあって差が出るのかといったごく基本的な概要と、実体験を元にしたそれらの考証をご紹介します。
ハイオクタン?
ハイオクタン=オクタン価が高い という意味で、(だいぶ端折っていえば)ガソリンの燃えにくさを示しています。
なんで燃えにくいガソリンだとパワーが出るの? というのはもっともな疑問ですが……
あくまで「燃えにくい」であって、「燃えない」とは違います。
ガソリンエンジンは、「吸入>圧縮・点火・爆発>排気」(2サイクルは吸入と排気が同行程)という行程で稼働しますが、このうちの「圧縮・点火」にオクタン価が深くかかわっています。
適切な量の空気と混ぜられたガソリン(混合気)は、ピストン上死点近くでプラグによって点火されますが、このとき爆発燃焼による膨張を最も効率よくピストンに受け止めさせてパワーに変換するには、火の回り具合を考慮して上死点よりもほんのちょっと前に点火し、上死点ちょうどで膨張が始まることにより最大効率となります。
点火が早すぎて上死点手前で膨張が始まってしまうと、ほんの一瞬とはいえ、圧縮方向に進もうとするピストンに対して抗う力として作用してしまい、効率が悪くなるだけでなく、エンジンに深刻なダメージを与えることとなります。>ノッキング
設計で意図していない早期着火の主な原因としては、高温+高圧縮による自己着火・カーボン等の体積物が火種となって等ありますが、(燃えにくい)ハイオクを使うことによってこれらの意図しない早期着火を防ぎながら最大限に点火時期を早めることができると、結果的に同じ量のガソリンからより多くの運動エネルギーを取り出すことができるのです。
近年の電子制御では、ノックを検知すれば遅角(リタード)し、そうでなければ設計の範囲内で最も効率のよくなるところまで進角(アドヴァンス)する制御が普通です。
ハイオク指定車にレギュラー
ある程度圧縮を高めて点火時期を進めたような、パワーを狙った車両では純正状態でもハイオクを指定されているケースが多いですが、近年の車両で純正状態であればレギュラーや低質なガソリンを一時的に入れてしまった場合や、入れざるを得ない状況であった場合に備えて、ノッキングを検知してリタードさせるといったエンジンにダメージを与えてしまわないための対策がされています。※注
ただし、点火時期を遅らせてしまうとパワーは大幅に落ちる(同じ量のガソリンから低い量のエネルギーしか取り出せない)ことになり、そのためにアクセル開度が大きくなってしまうと燃費面ではむしろ不利になる場合もあります。
特に速やかな加減速が必要で、アクセル開閉の度合いと機会の多いスポーティな走行ではむしろ燃費は落ちてしまいます。>リッターSSで1Lあたりの走行距離2km程度減
高速道路を加減速することなく淡々と制限速度保つといった修行僧のような走り方した場合でなら、なんとか距離あたりの価格差ぶんで釣り合うくらいにはなるかもしれません。
もっとも合流レーンで加速しはじめた途端にそういったことを綺麗さっぱり忘れ去ってしまう筆者としては、後者についてはまったく検証できておりません。
※注 ハイオクの使用を前提としてより過激なチューニングを進めた車両や、ノックを検知して遅角させる制御をもたない太古の車両でハイオクに合わせて進角セッティングしている場合は、当然のごとく壊れます。
レギュラー仕様車にハイオク
「レギュラー車にハイオクを入れるとパワーアップする?」
これもネット上でよく論議を見かけるものですね。
パワーアップした! トルクが太くなった! 燃費が伸びた! < 何も変わらない!
内容では相反していますが、いずれもあり得る話です。
ただ、パワーアップした! トルクが太くなった! 燃費が伸びた!は、正確にいうと間違いです。
色々な要素でノッキングが出やすい車両にハイオクを入れたことにより、ノックを検知するごとに遅角されていた制御を回避できて本来のパワーが回復したことと、それによりアクセル開度が小さくなったに過ぎません。
二輪よりも重い四輪であれば、パワーとフィーリングの両面ではっきり体感できるぐらいの効果があります。
純正状態でも加速時等に若干ノックの出るような、旧めのレギュラー仕様車であればハイオクを入れると効果はてきめんです。
逆に旧くても普段ノックなんかまったく出ないとか、現在の最新の検知と制御がされているような新しい車両であれば、効果はなきに等しいでしょう。
まとめ
移動だけが目的であればまだしも、通常はFun To Rideを目的に買ったであろうハイオク仕様車に、リッターあたり10円前後をケチってわざわざレギュラーを入れるのはナンセンスとしか言えません。
逆に、レギュラー仕様車にハイオクを入ることについては、ハイオク仕様車にレギュラーの場合のようにネガな影響が出ることはまずありませんので、とりあえず試してみて効果を体感・実感できるようなら、レギュラーとの差額と相談しながら継続してみるのは良いかもしれません。