日本ではまだまだマイナーな電動バイク。航続距離やバッテリー容量が年々増えているとはいえ、ガソリンを入れたらすぐに再度走りだせるエンジン車と比べると、まだまだ使い勝手は負けている印象……。
ならバッテリーも交換式にして、全国的にスタンドを置いてしまえばいいのでは?そんな試みが大阪で行われています。
電動バイク普及に向け国内メーカーが手を組んだ
国立大学法人・大阪大学(以下:阪大)と国内バイクメーカー4社は、電動バイク普及に向けた実証実験として「e(ええ)やん OSAKA」を今年9月から開始しました。
プロジェクトは、阪大の学生や教職員に普段の移動として電動バイクの貸し出し、阪大の豊中/吹田キャンパス内およびキャンパス半径20km圏内いくつかのバッテリー交換所を設け、その利便性やユーザーの行動変容を検証する大規模な実証実験です。
使用された車両はホンダ「ベンリィe:I」。通信技術と情報科学を組み合わせたテレマティックスによる車両利用情報取得や電動二輪車シェアリングサービスを想定したデータ収集を目的とし、MaaS活用の実証も含まれた意欲的な試みです。
補足:最近よく聞くMaaSって?
MaaS(マース)とは、「Mobility as a Service」の頭文字を撮ったもので、直訳すれば「サービスとしての移動」。公共交通機関をITを用いてより効率よく便利に使えるようにすることです。
たとえば、電車やバス、タクシーの予約から決済までスマホアプリで一括して行えたり、レンタカー、カーシェアリング、レンタル電動自転車は予約や決済だけでなく返却場所を一箇所に限定せず、いくつか点在する専用ステーションで返却可能としたり。ほとんど全てスマホを通じて利用可能になります。
現在は、MaaSを利用したカーシェアリングサービスや自転車シェアサービスが都市部を中心に広まりを見せています。一方、電動バイクではMaaSが活用されず、レンタルやシェアリングといったサービスもあまり普及していません。
バッテリー規格を統一化!好きな時にバッテリー交換可能に
そんな中で国内バイクメーカー4社は、電動バイクのバッテリーを交換式とすべく、バッテリー規格の統一化を図ることに。これを遂行するため2019年4月に合同で「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を設立しました。
もし規格が共通になれば、メーカーを問わずバッテリーが使えますし、ガソリンスタンドのようなバッテリー交換ステーションの設置だって夢じゃありません。レンタルバッテリーの交換サービスだってサブスクリプションで利用できれば、航続距離はもはや気にしなくてOK。
実はこれを実現している国が日本からほど近い台湾です。
電動バイク大国の台湾は交換式バッテリーが普及
台湾は1.7人に1台まで普及しているバイク大国。特にスクーターは人々の移動に根付いており、バイクの売り上げは日本の2倍。その一方で、バイクによる大気汚染が問題視されており、政府は電動化を推し進めています。
今では台湾メーカーから多くの電動バイクやスクーターが発売されているほど。その中で急激にシェアを伸ばしているのが電動二輪車ベンチャー企業「ゴゴロ(Gogoro Inc.)」です。
ゴゴロはバッテリー交換式電動スクーターの開発・製造と交換式バッテリー用充電ステーション「ゴーステーション(GoStation)」を展開し、台湾国内に約1,200箇所のステーションを設置しています。
ユーザーは月々の定額利用料を支払うだけで、電力の少なくなったバッテリーをステーションでフル充電されたものに交換できます。もはや充電の待ち時間も、重いバッテリーの予備や充電器を持ち歩く必要すらないというワケ。
専用アプリでステーションの位置を探したり、現在地からの距離、場所までのナビゲーションしてくれるという、非常に便利なシステムを確立しています。eやんOSAKAで目指しているのは、まさにこういった方向でしょう。
まとめ:電動バイクの普及はこれから本格化する
eやんOSAKAで具体的に目指すのは、ゴゴロのようなバッテリー交換ステーションの展開と、ステーションに置かれる交換バッテリーをあらゆる電動モデルで使用可能にすること、そして最終的に電動バイクが普及することです。
最近では、海外メーカーからリッタースーパースポーツと同等の動力性能を発揮する電動バイクも出てきていますし、魅力は十分。あとはインフラの問題くらいでしょう。
今回の実証実験が一刻も早く一般に活かされることを願うばかりです。