車を運転するとき、左足でブレーキを踏むメリット・デメリット

とある知り合いが、ドヤ顔で左足ブレーキしてると言ってしつこく勧めてくるので、ちょっと考察してみました。

 

AT比率

現在の日本の自動車販売数におけるAT比率は98%前後といわれています。

販売比率とのことなんで、昔から買い替えていないMTに乗り続けているような人は勘定にはいっておらず、実際の割合はもう少し変わってくるかとは思われますが。

 

20~30年前には、アメリカの軍や警察の考課に特技として申告できるものとして「MTの運転ができる」がある…… というのがネタとして笑い飛ばされていたくらいで、当時のATといえば常にズルズルにスリップ状態のトルクコンバーターと、ドライバビリティに関係なく隙あらば作動するオーバードライブであったり、意思に反してシフトアップ / ダウン、する / しないという局面も多く、少しでも運転に拘りのある層にはとても受け入れられるものではなく、AT比率は販売数で40~50%ほどだったと聞いております。

 

しかしながら、90年代半ばぐらいからロックアップ機構の性能アップおよび多段化による燃費とダイレクト感の向上や、2ペダルMTも含めたあらたな自動変速・断続機構(CVT、DCT等)も登場するとともに、走行シーンに応じたモード切替や、ドライバーの意思を反映するためのきめ細かな変速制御プログラムの格段の進化により、ジムカーナ等のように特殊かつエクストリームな使用環境に特化するのでもないかぎり、「好み」の点くらいでしか3ペダルMTの明確な優位性はなくなってきました。

 

そうした現在、他にも原因として類推されているものとして、電動化や特定車種独自の操作性も挙げられたりもしていますが、アクセルとブレーキの踏み間違いを原因とする事故の増加要因として、もっとも比重の高いものはアクセルを踏んだだけで、その踏んだだけの最大効率で走ろうとするATの普及といえるとは思います。

 

そんな中で「左足ブレーキ」を提唱し、普及させようといった層もあるのですが、筆者なりの左足ブレーキに対する危惧を書き連ねてみます。

 

レーシングテクニックとしての左足ブレーキ

もともとモータースポーツにおいて左足ブレーキを使用するのは、3ペダルMTでも昔から行われていたことです。

趣味でサーキットを走る程度の筆者も、ラップタイムを詰めていく上での試行錯誤で、多用までしないものの試してみるということはあります。

 

エンジン搭載位置や駆動方式により有効性の高低はあるものの、アクセルとブレーキと同時に踏むことにより、エンジン回転を落とさずに前後の荷重変動を起こすといった姿勢制御(によるコーナリングアプローチや修正等)が主な目的であり、どちらかといえばちょんちょんと「パッドを当てる」イメージで、がっつり本制動をかける場合ほどの踏力ではない場合がほとんどです。

 

ところが最近ではレースの世界でも2ペダルMTが主流になりつつあり、「(車種によっては)ブレーキは完全に左足」というプロレーシングドライバーも多くなっています。

 

日常の運転においての左足ブレーキ

では、一般のドライバーが公道で市販車で左足ブレーキを使った場合に、どういったことが考えられるでしょうか?

 

メリット

踏み間違いがない / その可能性が低いというのは、やはり一番のメリットとなります。

が、それ以外に思いつかないのですが、何かあるでしょうか?

 

デメリット

逆にデメリットとしては、MT乗りの立場から考えてみると色々と思いついてしまいます。

  • 慣れるまで、安全な環境で相応の練習が必要
  • 現状の右足ブレーキ向けペダルレイアウトで左足ブレーキするには、人間工学上不自然な姿勢となり腰・膝・足首等への負担となるだけでなく、機敏で正確かつ力を込めた操作が難しくなる
  • 急激な減速Gを受けたときに右足を踏ん張って、アクセルを踏みしめてしまう恐れがある

といったところでしょうか。

特に三番目は、なぜメーカーがオプションでも未だ完全な左足ブレーキレイアウトに対応しないのかといった主要因でもあります。

 

クスコ (CUSCO) 【 レーシングハーネス 】 シートベルト 6点式 FHR (FHRデバイス専用) (ブラック) 00B CRH N6HBK

前項で2ペダルのレーシングマシンについて書きましたが、そういった車両では5点式や6点式といった股にまでベルトを通して体の前ずれを防ぐフルハーネスのシートベルト体を固定しており、足を踏ん張らずとも減速Gに耐えることができる上に、個々のドライバーの好みによってペダル位置も高さも左足ブレーキに最適となるように調節してあります。

 

市販車も2ペダル車のブレーキは多少大型にされているとはいえ、現在のところ左足で本制動させるための最適配置とはいえないペダル位置・高さのものしかありません。

 

その他、慣れと心がけ次第で解消することもできますが、公道で左足ブレーキをする場合の懸念として

  • ブレーキに足を乗せている場合のフェードやベーパーロックブレーキランプの点滅や点きっぱなし
  • ブレーキから足を離している場合の操作遅れ浮かせている場合の疲労

を挙げることもできるでしょう。

 

対策

それでも左足ブレーキのほうが理にかなっているんだー!という人は、次の対策のいずれかはいかがでしょうか。

 

車両の改修

マスターシリンダーの移設や、ブレーキペダルブラケットの新造は個人レベルでは厳しそうなので……

VERUS ENGINEERING(VELOX):A0127A:MAZDA ROADSTER(ND5RC):スロットルペダルスペーサー

  • 左足でブレーキを踏んだ位置と高さにあわせて、ハンドルボススペーサーの装着とアクセルペダルの嵩上げ
  • 左足かかとを引っかけて踏ん張れるフットレストの設置
  • フルハーネスのシートベルトの導入
  • 尻が沈み込むことにより、腿で体の前ずれを防ぐことのできるバケットシートの導入

などあたりでしょうか?

 

右足ブレーキと左足ブレーキの使い分け

上で挙げたものは冗談半分として。

  • 普段や緊急時の本制動は右足ブレーキ、低速取り回し時等の調整と軽制動のみ左足ブレーキ併用

左足ブレーキで問題なくそこらを走れるレベルに練習した人なら、意識的な使いわけも簡単にできるはずと思います。

 

まとめと余談

何かを主張するときに、分かりやすくワンイシューにまとめるということは大事ではありますが、利点の裏にある危険についても考えてみましょう!

 

なお、フルハーネスで股を通すベルトのことをクロッチベルトといいますが、これらはあくまで腰にかかるベルトがずり上がって体が前ずれするのを防ぐためのものであって、衝突時にも決して食い込んでくるものではないのでご安心を。

 

参考ーflickr