昔からよく言われる言葉に「無駄を除いた美しさ」というのがある。車やモーターサイクルで言えばそれはよくレーシングマシンに例えられる。
「走る」ということに徹したマシンには「美しさ」があるというものだ。確かに究極的で、それを絶賛する人も多い。ただ、同じ地上を走る乗り物でもレーシングマシン以外にも「一切の無駄を除いた」車両がある。
軍用車がそれだ。「様々な地形に対応可能」、「丈夫」、「耐久性が高い」などなど。兵器を積載していなくても兵員や物資の輸送に使用されるトラックにもこれらの条件は必須となってくる。
日本では自衛隊が使用している6輪駆動トラックや人員用パジェロ、多目的車両のメガクルーザーなどがその代表でもあるだろう。ただこれらの車両は、基本的に我々一般人は登録して一般公道を走行することができない。
ハイスペックな軍用車「HUMVEE」(ハンビー)
でもアメリカ軍が使用している軍用車「HMMWV」、通称「HUMVEE」(ハンビー)はそれが可能。世界のトップと自他ともに認めるアメリカ軍の正規車両ハンビーはすごくおもしろい、というかまったく実用的に造られている。
1980年代中盤に軍に正式採用されたハンビーは、湾岸戦争やイラク戦争で活躍した。今もアフガニスタンやイラクで活動しており、その利便性は高い。ただ2015年を持って次世代の車両と交替し今は新車として造られることはなくなった。
このハンビー、基本車体をベースに、2名乗りトラック、4名乗りトラック、救急車、ミサイルや機関銃搭載型戦闘車両など様々な車両に変更できる。ちなみに日本の自衛隊が使用しているメガクルーザーもこれを参考にして同じように変更が可能だ。
ボディはアルミ製でボンネットは強化FRPで構成されおり、大型ヘリコプターに吊り下げられる装置や被弾しても50マイル走行可能な特殊ミリタリータイヤが標準装備されている。もちろんデフロック付の4輪駆動で、パワーステアリング付のオートマチックトランスミッションを採用した6.2Lもしくは6.5Lのディーゼルエンジン(一部ターボチャージャー付きもあり)は、わずかな吸排気の変更だけで水深1.5mでの走行も可能というスーパーぶり。
ソフトトップ、4ソフトドアの兵員、物資輸送用M998という型がポピュラーでハードトップ、4ハードドアのミサイルランチャー装備用M1045という型も人気だ。もちろん日本に入ってくる際はミサイル装備などは一切なく天井の真ん中にある穴は塞がれている。なお、ボディが防弾用に装甲されたハンビーは実際の軍事目的車両として扱われるため一般にはアメリカ国外には輸出できない。
ただ、先述したM998やM1045などはアメリカ政府の許可があれば輸出が可能で、日本にも15台ほど入ってきている。
全長はクラウンよりも短い4.8m、幅は2.1m(型によって若干サイズは違う)の埃や汚れの似合う究極的車両ハンビー、世界の名だたるスーパーカーなどより「美しい」かも知れない。