ギャアアアというタイヤの鳴く音とともに、リアを滑らせながら峠を駆け抜けていくハチロクやRX-7。しげの秀一先生の名作「イニシャルD」には迫力ある日本車の数々が登場します。その人気は日本に留まらず、海外のSNSでは連日劇中のユーロビートを使用した動画が投稿されているほどです。
1980~1990年代の日本車への人気も相当なもので、最近ではどんどん中古車が輸出されていってしまっています。特に熱いのがアメリカ。輸入だけでは飽き足らず、JDMというカスタムが流行しています。日本車のパーツや日本のアフターパーツメーカー品を使ったりと、日本のカスタム文化を独自の解釈で楽しんでいるのがよくわかります。
日本仕様へのモディファイや日本独自のカスタムを指す表現
JDMは「Japan Domestic Market」の頭文字を組み合わせたものです。直訳すれば「日本国内市場」となりますが、元々はアメリカ仕様のクルマを日本仕様に仕上げるカスタムを示す言葉でした。そこから転じて、日本のアフターパーツメーカーが販売する部品を使ったカスタムが施された日本車を表現する時にも使われるようになりました。
あわせて知っておきたいのがUSDM。「United States Domestic Market」の頭文字を合わせたもので、アメリカ向けの純正部品を日本向け車両に装着するカスタムを指しています。
これら2つのカスタムを「視点」に注目して見てみると面白いことに気づきます。JDMはアメリカ国内から日本のクルマを参考に、そしてUSDMは日本国内のユーザーがアメリカ仕様のクルマを参考にしているワケです。互いの国で普及しているクルマやカスタムをお互いが真似しあった構図で、他国の文化や異国の地に対する憧れを感じさせます。やっぱり隣の芝は青いものなんですね。
日本独自のものなら何でもJDM
JDM最大の特徴は、日本独自のものであれば何でもOKということです。純正部品だけでなく、日本独自の法律に関係することですらJDM化されています。
例えば、日本国内を走っているクルマのウインカーはオレンジ色で、スピードメーターはkm/h表示となっているのが基本。それに対してアメリカ国内を走るクルマのウインカーは赤色で、スピードメーターがマイル表示になっています。
公的に認められたクルマの管理場所があることを示す車庫証明ステッカー、燃費基準達成ステッカー、そして車検の有効期間が載っているシールなどもJDMカスタムでは人気のアイテムです。日本国内でクルマを所有していれば特別珍しいものではありませんが、海を渡ればカスタムパーツという立派な付加価値のついたものへと変貌します。欲しくても購入できるものではないのが難ですけれど。
とはいえ、ステッカーくらいなら個人輸出して小遣い稼ぎに利用できるかも。さすがに日本車を海外へ輸出するビジネスをしようと思うと、ちょっと敷居が高いですが……。
存在感を出すパーツメーカーたち
JDMカスタムを支えるのはメーカー純正パーツだけではありません。タイヤメーカーのトーヨータイヤやサスペンションメーカーのTEINなどのアフターパーツメーカーもJDM発祥の地 アメリカで積極的に製品展開やカスタマーサポートを行なっています。
また、シートベルトやエアバック製品で知られるタカタ社のフルハーネスもJDMでは人気アイテムの1つ。フルハーネスというとサベルトやシンプソン、スパルコなどで有名ですが、これらはどれも海外のパーツメーカーです。日本を全面に押し出したJDMにはタカタ製品がよく似合うということでしょう。ちなみに写真に写っているフルバケは日本のシートメーカー ブリッド製になります。
JDM好きならオートサロンにも注目
JDM好きなら見逃せないのが、東京、名古屋、大阪などの主要都市で毎年開催されているオートサロン。このイベントには走行性能の向上を極限まで目指したマシンや、ドレスアップに徹底的にこだわったカスタムカーなど、さまざまな日本のチューニングカーを目にすることができます。
国内の有名ショップが手塩にかけた本気のクルマが並ぶ光景は圧巻そのもの。JDMに憧れを持つユーザーであれば、様々なインスピレーションを得ることができそうです。
今後もJDMから目が離せない
日本仕様の日本車や日本独自のカスタム文化、さらには車検や車庫証明といった公的なものですらカスタムとして捉えたJDM。アフターパーツメーカーやタイヤメーカーも積極的に発祥地のアメリカで事業展開を進めており、ビジネスとしての注目度も高いです。今後もJDMから目が離せません。