丸目のヘッドライトに流線型のなだらかなボディと見た目はノスタルジックなのに、どこか漂う近未来感。本日2020年9/29に京都パルスプラザにて発表された京セラのコンセプトカー「Moeye(モアイ)」には「レトロフューチャー」という言葉がよく似合います。
クルマの過去と未来を一台で体現
デザインを手掛けたのは、「トミーカイラZZ」で知られるEVメーカー GLMの元チーフデザイナー石丸竜平氏です。現在ではデザインスタジオ「(フォートマーレイ)」の代表を手掛ける氏がテーマとして掲げたのは「時間」。連綿と続く自動車の歴史を駆け抜けて、未来までつながるイメージを想起させるようにしたといいます。
そのコンセプトは前述したとおり、外観からすでに貫かれています。全体のプロポーションはまさに1930年代のロールスロイスやベンツを彷彿とさせるクラシックカー風でまとめられていながら、LEDのヘッドライトやバックランプ、リアビューカメラとおぼしきサイドミラーといったディテールは現在の延長線上にあるもの。まさに過去と未来のマリアージュです。

デザインスケッチにはシトロエンを代表とする名車「2CV」や宇宙船と呼ばれた「DS」なども描かれている。そうしたモデルのエッセンスを抽出し、近未来感を持たせるためにボディに膨らみを持たせたという。結果、さらに時代を遡るようなボディラインとなったことはとても興味深い。
インテリアに目を映すと、そこはミニマルで気持ちのいい空間が広がっています。フューチャリスティックなデザインのシートは、馴染み深いテキスタイルの座面とサイドのレザーサポートでまとめられています。これもまた伝統と革新の調和を意図しているのでしょう。
シートの調整の仕方はこれまた独特です。常に頭がちょうど良い位置にきて、くつろげるようにという配慮から、ヘッドレストは天井から固定。シート側を前後上下に移動させるようになっているのです。まさに自動運転を前提とした設計ならではの工夫といえます。
ダッシュボードが透明化⁉︎
ひときわ存在感を放っているシンプルなダッシュボードは、今回のコンセプトで目玉ともいえる未来技術の産物。ここにバーチャル3D 映像を表示可能なだけでなく、京セラが東京大学と共同開発した光学迷彩技術のおかげで透明化することだってできるのです。だからこそ、こんなに視覚を遮ってしまうくらい大きくても問題ないんですね。むしろこの方がエンターテイメントは楽しみやすいですし。
タッチパネルにも先進技術アリ。インターフェースの操作に応じて微細な振動を発生させ、あたかも「ボタンを押し下げている」ような感覚を指に伝えてくれるのです。これは気持ちよさそう。
スマートフォンの硬さに慣れてきている現代人とはいえ、物理スイッチの手応えはやっぱり恋しく感じる時があります。トグルスイッチやボタンをカチカチするストレス解消用のおもちゃがあるくらいですからね。

ちなみにセンターコンソールに華を添えているオパールは京セラの手によるもの。人工だとは思えないくらいきらびやかな輝きを放つ。
クルマのスマホ化なんていわれて久しいですけれど、このくらいワクワクさせてくれるギミック満載なら、自分でステアリングを握れなくなる日が来たとしても別の楽しみが味わえそうです。運転手付きの高級車を表す”ショーファードリブン”が一般のものになれば、クルマはもはやエンターテイメントとしての空間であってもいいのかもしれません。