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電動化時代に逆行する再生産。ボルボ「P1800 cyan」はエンジン車の伝統を残せるか

ボルボ P1800Cyan

レストアとモディファイを掛け合わせた「レストモッド」というカスタムジャンルが、近年盛り上がっています。

 

もともとのレストア(復旧・復元)は、いかにオリジナルの状態を保ちながら、忠実に再現するかを重視して注力されるのが常でした。

ですが、その状態で乗り続けるのは現代人には少々不便。そこで往年の名車に現代技術を積極的に取り込むモディファイを加えて性能と快適性をアップし、「古いスタイルながら申し分ない走り」と「普段使いにも不自由しないユーティリティ」を与えられるようにと考えたれたのが、レストモッドだったというわけです。

 

オリジナル重視も歴史の継承という面では重要ですが、やはりクルマもバイクも乗りたいときにすぐ乗れて、ゴリゴリ走らせてなんぼですもんね。

レストモッドとはちょっと違うのですが、そういった嗜好に対してビビっとくるクルマが発表されましたので、その歴史とともにご紹介します。

 

今見ても美しいボディライン:ボルボ「P1800」

ボルボ P1800

ボルボ「P1800」は日本でもボルボがメジャーになってくるバブル期以前のモデルで、1961年に製造が開始され1972年まで生産されました。同時期に生産されていたボルボ「アマゾン(セダン・2ドアHT)」のシャシーのホイールベースを詰めて、流麗なクーペボディを架装して仕上げられています。

 

初期モデルでは英国の工場に委託生産されていたこともあって、どこか英国の雰囲気が漂うパッケージングでした。さらにフェラーリをはじめとする当時の先端的なイタリアンデザインを核としながらも、それまで黄金期であった1950年代のアメリカンデザインも混ざり合い、破綻のない美しいボディラインやディテールを実現。今なおファンの多いクルマです。

 

このスタイルに組み合わされるパワートレインは、直列4気筒の1800~2000ccという比較的実用的な範囲でした。さらに価格面でも抑えられており、例えば同時代のフェラーリ「330GTシリーズ」のように、超絶性能を誇る大排気量マルチシリンダーエンジンを搭載したピュアスポーツやグランツーリスモ等に比べると遥かに現実的な設定。手の届き易い美しいクーペとして世界的に人気を博しました。

 

フェラーリ 330GT

フェラーリ「330GT」1963~1968 V12気筒3967cc 300PS

 

再生産モデル:ボルボ「P1800 Cyan」

ボルボ P1800Cyan

そんな歴史的な一台が現代に「P1800Cyan」として蘇りました。冒頭でも触れましたが、これは「レストモッド」ではありません。

レストア(復旧・復元)というからには、古いものをベースとして補修やモディファイに応じて補強することになるのですが、こちらはリプロダクション(再生産)で、隅々に至るまで現代技術を活用して新造されたものなのです!

 

ボルボの高性能モデルである「ポールスター」シリーズを手がけているだけでなく、ボルボのレース活動やスペシャルモデル開発にまで携わっている「シアンレーシング」が手掛けました。

市井のビルダーが古いものをベースにする場合には、どうしても妥協せざるを得ない部分も出てくるのですが、P1800Cyanはメーカー自らともいえる体制なので、ハードウェアとしての出来は格段のモノとなっています。

 

コンパクトな超軽量ボディに、コンパクトな過給ハイパワー

ボルボ P1800Cyan

まずサイズ・パワー・重量と、速くて楽しいクルマを造るための絶対条件を全て網羅しています。

 

現代のクルマが様々な制約(法的なものやセールス的なもの)によって肥え太る以前のコンパクトなボディサイズ。それに加えて、当時にはなかった新素材(ハイテンションスチールやカーボン)を多用しながら再設計することにより、車体剛性を大幅にアップしながら990kg!という軽量さを実現しています。

 

エンジンはオリジナルと同様にコンパクトな直列4気筒2000ccながら、ターボチャージャーを追加しての420PS!2017年のWTCR(世界ツーリングカー・カップ)のチャンピオンマシン、ボルボ「S60 TC1」のエンジンをベースとしただけはあります。

さらにオリジナルでの自然吸気のフィーリングに近づけるために、ターボの二次曲線的なパワー特性になることを避けたとのこと。あえてピークパワーを相当絞っての420PSだと思われます。

 

筆者などはこのサイズと車重、パワーを聞いて妄想するだけでニヤニヤしてしまいます。

 

脚まわりも抜かりなし

ボルボ P1800Cyan

アルミ製アームによる四輪独立でのウィッシュボーン形式に置き換えられたフルアジャスタブルのサスに、14インチローター+対抗4ピストンのキャリパーのブレーキシステムおごった足回り。

 

ボルボ P1800Cyan

タイヤホイールも、サス・ブレーキのアップデートにあわせてオリジナルからは大幅にサイズアップされ、フロントに235/40R18、リアに265/35 R18を履きこなします。

車重からすれば過剰とも思えるこれらの装備であるためか、はたまたそういったものを活かせる・好む方の嗜好に沿ってなのか、ブレーキブースターやABS、トラクションコントロールはいっさい装備されません。

 

もっともボディの受動安全とあわせると、今でもそういうクルマを造りたいなら造ってもいいの?という疑問は生じてしまうのですが……。明記はされていませんが、当時の形式認定・届け出台数と、実際の生産台数からの余り数を活用したような再生産プロジェクトなのかもしれません。

 

日本で入手しようと思ったら……やっぱりキビしい!

ボルボ P1800Cyan

とんでもなく魅力的な一台なので、最終的にこう結んでしまうのは非常に心苦しいところですが……

残念ながら、もともとの価格(予価5300万円)と限定数(ごく少数?)から鑑みるに、平均的な稼ぎでつつましく暮らす一般ピーポーが、ただ「欲しい」で手の届く代物とはなりそうにはありません。

 

それでも!と夢想しながら、夢は諦めたくないところ。完全電動化の時代を前にして、こうした真逆をいく試みがトレンドになって、なんとか手の届くところにならないものかと願わずにはいられない筆者なのでありました。

Cyan Racing

公式サイト

Kenn

モノと生き物の境目が曖昧なちょっとイタい人。 バイク・クルマに限らず、作り手の情熱・魂の込もったモノに惹かれます。 DOS時代から名乗っているハンドルなので、某声優のほうが後発デスヨ