災害国日本で求められている車の姿とは?タイに先を越された日本

東日本大震災から早9年。今でも津波によって蹂躙されていく東北の町々の光景を鮮明に覚えている方も多いことでしょう。近年では、大雨によって起こる河川の氾濫や洪水被害も後を立たず、水害への対策は常に求められています。

かつて河川近隣の家ではいざというときの移動手段として、屋根裏に小舟を置いておくことも多かったようですが、都市部に見られるような現在の狭い住宅事情を考えると、おいそれとスペースをさくのは難しいものです。

 

水に浮くEV

なら多くの家庭で身近なクルマを浮くようにしてしまったら?という発想を形にしたのが、洪水多発地域のタイで発売されているFOMM(フォム)の4人乗りEV「FOMM One(フォム・ワン)」です。

 

見た目は軽自動車よりもコンパクトな小型モビリティといったところですが、特筆すべきは水面に浮き、移動を可能にした工夫です。部品点数を抑え、前輪にインホイールモーターを採用するなどして内部機構の省スペース化を徹底し、車体には合成樹脂を使うことで車体を軽量化しています。

 

さらに車体底部に秘密が。船艇と同様の形状にし、バスタブのような中空構造とすることで船顔負けの浮力を生み出せるようにしています。

 

水上を移動できる仕組みは、前輪にあります。モーターを内蔵したホイールが回転することで専用タイヤのトレッドパターンが水をつかみ、後方にかき出すことで推進力が生まれるのです。ホイールインモーターということで水による故障を心配してしまいますが、きちんと防水対策がなされているので安心です。

 

操作系もシンプルに考え抜かれています。アクセルはハンドル奥のレバー、ブレーキは足元のペダルとなっているので、アクセルの踏み間違えだってありません。

 

開発は日本のベンチャー

実はこのFOMM One、販売こそタイで行われていますが、開発を行っているFOMMは神奈川県川崎市に本社を構えるれっきとした日本のベンチャー企業です。創業者の鶴巻日出夫さんは東日本大震災の津波被害を目の当たりにしたことで、水上を移動できるEVの開発を決意したといいます。

ところがいざ開発してみたものの、日本ではさまざまな規制からなかなか市場に送り出すことができませんでした。そこで海外でも、雨季の洪水被害が顕著なタイをターゲットに設定。首相へ直談判したところ、FOMM Oneの実用性をいたく気に入り、専用の車両規格の制定にまでこぎつけたといいます。立憲君主制ならではのスピード対応ですね。2019年の3月には量産を開始し、日本円にして約220万円という価格ですでに約200台をタイ市場に送り出しています。

 

FOMM One用に新規に設定された自動車規格を示すステッカー

 

鶴巻社長によれば、日本でのデリバリーも近々できるよう模索しているとのこと。タイに出遅れた感はありますが、実現すれば水害による被害を減らす立役者となってくれそうな一台です。

株式会社FOMM

〒212-0032 神奈川県川崎市幸区新川崎7-7
かわさき新産業創造センター(KBIC) 本館214号

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