このまま走れるの!?後輪に取り付けられたロックみたいなデバイスはいったい……

クルマの後輪に取り付けられた、一見するとどう見ても駐禁のロックにしか見えないデバイス。イルミっぽい感じもあるだけにドレスアップパーツにも見えるものの、決してカッコよくはないし……。しかもこのまま走ることができるということもあり、ますます謎は深まります。

これって一体なんなんでしょう?

 

答え:タイヤカスの集塵機

 

答えはタイヤカスの集塵機。といっても、鈴鹿サーキットのお土産として有名な「タイヤカスさきいか」ほど大きなものを集めるのではなく、通常の走行で生じるミクロレベルの粉塵に対応しています。

驚くことに1台のクルマが1日あたり16kmの通勤に使用された場合には2.08gのタイヤ粉塵を生じ、ロンドン交通の路線バスが全ルートで1日稼働するともなると、336.3gものタイヤ粉塵が発生するそうです。おおよそ、リンゴ1個分ほどの重さにもなります。

さらには、EVの普及により直接的な大気汚染物質の排出は減りながらも、電池による車体重量の増加でタイヤ粉塵はむしろ増加傾向となるとも予想されています。

 

実はタイヤの摩耗粉塵は、道路輸送から生じるPM2.5(※)の半数ほどを占めており、さらには使い捨てられたプラスチックに次ぐマイクロプラスチック海洋汚染の原因でもあるのです。

(※)PM2.5:直径2.5㎛以下の非常に小さいParticulate Matter(粒子状物質)で、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染の原因

 

回収困難な微粒子のプラスチックが環境を汚染している

マイクロプラスチック問題とは、ざっくり言えばさまざまな理由で粉砕された廃棄プラスチックやゴムの微粒子が、大気中や海洋といった自然界で分解されることなく滞留してしまっていること。2004年のサイエンス誌に「Lost at Sea: Where Is All the Plastic?」という論文が発表されたことから問題として取り上げられはじめました。

 

これらのマイクロプラスチックは、呼吸による直接の人体への取り込みだけでなく、生物濃縮による問題もあります。これは食物連鎖を経るごとに生物の体内のマイクロプラスチック量が濃縮されていく現象で、上位の人間ともなると様々な健康上の悪影響に繋がるとされているのです。

石油化学製品が生み出されて以来、無頓着に廃棄されていた時代も含め、マイクロプラスチックによる汚染は年々深刻化しており、ごみの発生量をはじめとしたデータに基づく予測によれば、何も手を打たなければ20年後の海洋へのマイクロプラスチック流入量は現在の10倍にもなるとされています。

 

拡散前に回収するという発想から生まれたデバイス

そこで回収できるものは拡散してしまう前にできるだけ回収してしまおうと開発されたのが、今回紹介している「The Tyre Collective」です。

一見、どうやってタイヤが回るの?といった見た目ですが、実際には裏のナックル部に取り付けられていてタイヤの回転には影響しません。ちょうどヤマハ MT09やドゥカティ スクランブラーのナンバーステーと同様の取り付け方ですね。

 

タイヤ後方位置に帯電された電極が装備されており、タイヤ粉塵は電極に吸着・集積され、一定量が溜まるごとに回収することにより、新たなタイヤの原料として再利用されます。筆者の第一印象では「(うわー、カッコ悪い)何もここまで」ではありましたが、読んでみるほどに「ここまでしないと」いけないところまで来たんだと認識を新たにしました。

 

実用上輪留めとの接触といった問題点もありそうですが、汚染問題が深刻になるにつれ装備の義務化になることもあるかもしれません。

The Tyre Collective

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Kenn

Kenn

モノと生き物の境目が曖昧なちょっとイタい人。 バイク・クルマに限らず、作り手の情熱・魂の込もったモノに惹かれます。 DOS時代から名乗っているハンドルなので、某声優のほうが後発デスヨ