3ボタンスーツや紺ブレザーといったトラッドスタイルに身を包み、クラシカルな愛車と一緒にスタイリッシュなライディングを楽しむ……。そんなイベントが毎年世界各地で開催されているって知っていました?
その名も「ジェントルマンズライド」。名前からすでに紳士淑女感が漂っていますが、その開催意図からしてかなり粋なんです。
バイカーへのネガティブな印象を払拭したい
ジェントルマンズライドはオーストラリアのマーク・ハウアーさんが発起人となっているチャリティーイベント。その目的は、前立腺がんをはじめとする男性特有の病気に対する研究と、男性のメンタルヘルスに対する認識を高め自殺予防をするための資金を調達するというものです。
なんだかこれだけ聞くとバイクなんか全く関係ない普通のチャリティーに見えますが、ハウアーさん自身はかなりのバイク好き。日頃から感じていた「バイクにまたがる男性へのネガティブな印象」をなんとか改善できないかという思いが、イベントの原点なんです。
そんな彼にインスピレーションを与えたのは、ニューヨークの広告業界を描いたTVドラマ「Mad Men」。劇中でスーツ姿の主人公がクラシックバイクに颯爽とまたがる姿が目に止まったのです。
「こうした粋なバイカーの姿こそ、印象アップのきっかけになるんじゃないか」と、古き良き時代の紳士な装いとクラシカルなバイクという組み合わせをテーマにしたパレードランを計画。そうしてその輪を世界中に広げつつ、チャリティーによる社会貢献をしていけば、バイク文化への理解が得られるとハウアーさんは考えました。
2012年に開始したこのイベントは年々開催地と賛同者が増加しており、2020年までの8年間で104カ国から延べ31万6000人のバイカーが参加。約2450万米国ドル(日本円で約23億2750万円)の寄付金を集めるまでになっています。
横浜では小規模ながらパレードランを実施
その輪はもちろん日本へも広がっています。2016年に初上陸した同イベントは、トライアンフモータサイクルズジャパンがオフィシャルスポンサーとなり毎年開催を主導してきました。
ところが2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、大規模なパレードは断念。感染拡大防止の観点から「ソロライド」をコンセプトとして掲げ、各地で個々のバイカーが自主的に走るという形式で実施されることになったのです。
そんな個別開催の中でとりわけSNSを賑わせていたのが、バイク用品メーカー「RIDEZ」が中心となって開催した神奈川県横浜市での取り組み。新しい生活様式を徹底することで、小規模ながらパレードランの実施に漕ぎ着けました。
集まったバイクはRIDEZのメンバーによる6台を含む総勢35台。参加経験者が多かったものの、その友人や知人も参加しており、横浜でも確実にジェントルマンズライドの輪が広がっていました。そのオシャレな装いで走る姿は、街ゆく人たちを楽しませたことでしょう。
コロナ禍の暗雲を照らす、明るい話題のひとつです。
それにしても、思い思いの”正装”に身を包んだバイカー&こだわりのバイクの組み合わせといったら……なんてドレッシー!
安全の確保が大前提なのは確かですけれど、それでオシャレを諦めてしまうのはもったいないですよね。最近ではインナープロテクターも種類が豊富になっていますし、思い思いのスタイルでバイクに乗れる日はもう来ているのかもしれません。もっともベストタイプじゃないとシルエットがゴツくなりがちですけれど。なで肩ならちょうどいい……かも。
なんとも意欲的な取り組みのジェントルマンズライド。来年も開催予定なので、気になる方は要チェック!
なお本来の目的である前立腺癌研究と自殺防止活動への寄付は常時受け付けているので、賛同する方はぜひジェントルマンズライド公式ホームページを訪れてみてください。バイカーの地位向上につながるかもしれませんよ。