新たな排ガス規制に適応できず、惜しまれつつも生産中止となってしまったスズキ・隼。
その噂は様々出てきながらも、新型の登場はないままに日本での生産中止からはや2年経ってしまいました。
じきに新しい規制に適合した新型が出てくるのは確実とは思われますが、待ちきれずに今から中古で隼を買おうといった方もいらっしゃるかと思います。
今回の記事では、個々の車両の走行距離やヤレ具合といった一般的な中古車選びで考慮すべき以外の、年式による違いをご紹介します。
当たり年?
当たり年(外れ年)というと、ワインなんかではよく聞く言葉ですね。
しかし、通常は工業生産品に年毎での出来・不出来といったものはあってはならないものです(笑)。
稀にマニュファクチュア的な小メーカーでは、経営・生産の体制の変移次第でそういったことはあるかもしれませんが、スズキという世界的な一流メーカーでそういったことはあり得ないでしょう。
例外としてバイク・クルマの世界では、年式がホモロゲモデル(※)や、規制の狭間にごく短期間製造された特別なものを指す場合もありますが、隼には珍重されるほどのものは存在しないようです。
※ホモロゲモデル:レースベースマシンとして元から優位を見込める車両を、プロダクションレースへの参加資格を得るため、量産車としての体裁をとるためだけに一定数を生産・販売される車両
が、基本設計から20年を経た歴史あるバイクですので、年次の改良や変更による様々な組み合わせはあります。
その組み合わせとオーナーの趣味嗜好次第での「当たり年」といえるものはあるのではないでしょうか?
以下にその年次でないと装備されていないものや、仕向地・仕様による違いを挙げていきます。
340(350)km/hメーター
事実上、隼が登場したことによりEU圏において「そんな速いバイクはけしからん」との声が高まったと言われており、2001年モデルからは280(300)km/hメーターに変更されました。
純正で350km/hまで目盛りが刻んであるメーターを装備しているのは、1999年~2000年モデルです。
触媒レス
かつてのEU圏向け仕様といえば、二輪四輪問わず環境性能よりも走行性能を重視したものでしたが、EU圏においても環境保護の声は高まり、他の仕向地と同様に触媒が装備されることになりました。
純正で触媒が装備されていないのはEU仕様の1999年モデルのみです。
ECU
ECU(エンジンコントロールユニット=コンピュータ)が16bitから32bitに変更されました。
これによりコンピュータの処理速度が向上し、よりきめ細かい制御が可能となって、俗に「ドンつき」などと呼ばれる初期のインジェクション車で嫌われていた、アクセル開け始めの過剰なレスポンスが抑えられて乗り易くなりました。
32bitのECUを搭載しているのは2002年モデル以降のモデルです。
前期・後期
20年にわたる隼の歴史の中では、一度フルモデルチェンジがありました。
基本的にキープコンセプトながらも、各部のポテンシャルが底上げされながら、デザインの細部が洗練されました。
- 排気量アップ(ストローク2mm増しでの41ccアップ)
- 吸排気バルブをチタン製に変更
- インジェクターのデュアル化
- S-DMS(スズキ・ドライブモードセレクター、エンジンの出力特性選択装置)の採用
- フレーム剛性15%アップ
- スリッパークラッチの採用
- フロントブレーキキャリパーのラジアルマウント化
- カウル / ライトのデザイン変更
総じて性能は落とさないまま(むしろ向上しながら)に、よく躾けられた乗り味になったと評価されています。
フルモデルチェンジがあったのは、2008年モデル以降のものです。
国内仕様
それまでは逆輸入車としてしか流通していなかった隼ですが、免許制度の変更から大型バイクの需要が高まったことと、最高出力の自主規制が撤廃されたことから、日本国内仕様が設定・販売されました。
- フルパワー(197ps)
- 180km/hメーター
- 180km/hリミッター
- ETC標準装備
- 車両本体価格で12万円安
それまで国内仕様というと、いずれのメーカーのものも意図的にパワーを大幅に落としたものが大半でしたが、隼の国内仕様は各輸出仕向地と比べてもフルパワーといえる197psで販売されました。
メーターとリミッターについては、品行方正なメディアとしては「日本で乗るにはそれで良いはずでは?」としか言えませんので(笑)、読者各位の感性とご判断におまかせします。
国内仕様として販売されたのは日本仕様の2014年モデル以降です。
リコールの有無
リコールとは製造・販売後に判明した欠陥を、法に定められた製造・輸入販売の責任において無料で改修するという制度です。
国内仕様であれば全く問題ありませんし、モトマップ(スズキ逆輸入車の正規ディーラー)を通じて販売された正規輸入車両であれば、中古購入してのリコールの有無の調査や欠陥部分の改修について困ることはないと思われますが、一定の手間はかかってしまいます。
リコールの最終責任はメーカーにあるので、全く対処不能ということはないと思われますが、販売経路による責任の所在があやふやになる並行輸入車には、より多くの手間がかかる事が多いので注意が必要です。
今から探すのであれば、リコールが出ていない年式に限って探すというのも一つの手段でしょう。
リコールの出ていないのは、2005~2007年の前期モデルと、2013~2017年の後期モデルです。
まとめ
基本的に全ての用途について満遍なく考えた場合には、ポルシェ911で良く言われるように「最良の隼は、最新の隼」といえるかもしれません。
が、比較的ハードなチューンをして、サーキットまで自走するといった使い方を考えているようなユーザーであれば、生産・輸入した当時の排出ガス・騒音といった旧規制が適用され、車検毎にノーマル化しなくても済む低年式モデルを敢えて選ぶことにより得られるメリットもあったりします。
あなたならではの「当たり年」となりそうなものはありましたか?