2018年もようやく終わりを迎えますが、今年のMotoGPの王座は去年と同じく、もてぎサーキットでホンダのマルク・マルケスのものとなりました。
そして去年と同じくさまざまな激闘が繰り広げられたMotoGPクラスでしたが、その中でもひときわ盛り上がった激闘シーンを選抜してまいりましたので、今年を振り返る気持ちでご覧ください。
初戦カタールGPドヴィツィオーソVSマルケス
ザルコの首位で始まったカタールGPでしたが、なかなか古参勢の縄張り意識は強いようで、後半には首位争いからははじかれてしまいました。
15週目にスリップストリームに入ったドヴィツィオーソが2位のマルケスを追い抜きザルコにかみつきます。
残り5ラップで再び直線でスリップストリームに入ったドヴィツィオーソが第1コーナーでインコースに入り、ザルコを外回りへ押しのけます。そのインコースについていったマルケスも順位を上げ、そのまま最後の首位争いにもつれ込みました。
マルケスが必死に食らいつくも、なかなかドヴィツィオーソを抜ききることができず、最終ラップを迎えてしまいます。最終コーナーをブレーキ抑え目でインテイクするもそのままアウトワイドに膨らんでしまい、ドヴィツィオーソにすぐさま抜き返されてしまいました。
アルゼンチンGP ロッシVSマルケス
スタート直前にマルケスがエンジンストールを起こしてしまったアルゼンチンGP。なんとか自分でエンジンスタートをするも、逆走扱いになりピットスルーを課せられてしまいます。焦ったマルケスが強い追い上げをかけますが、これが物議を醸すアグレッシブレースに発展してしまいます。
追い上げるマルケスが18位のアレイシ・エスパロガロをインからオーバーテイクをしようとしていますが、静止画を見てもわかる通りインにスペースがないのに無理やり突っ込んでいます。エスパロガロの後部に接触し、彼をワイドに弾き飛ばします。
その後、一桁台の順位まで追い上げたマルケスは伝説ロッシにも同様の割り込みを決行し、ロッシをグラベルに弾き転倒させてしまいます。これによりマルケスにはさらに30秒のペナルティが課せられました。
このマルケスのアグレッシブなライディングはライダー各位にとって、自分の走りを見つめ直すきっかけとなり、今後の展開に大きく影響を与える要石になりました。
スペインGP ドヴィツィオーソVSロレンソVSペドロサ
非常に白熱していたスペインGPの後半でのドッグファイトです。残念ながらそのドッグファイトはあまりよくない形で幕を閉じることになってしまいしたが。
マルケスがトップに躍り出てからホンダ勢とドゥカティ勢の首位争いが始まります。
残り17ラップでドヴィツィオーソがペドロサからインコースを奪い3位に進出。ここから4人での激しい戦いが9ラップほど続きます。
そしてのこり8ラップになった頃。4人の首位争いは意外な形で結末を迎えます。
直線でそのトップスピードをいかんなく発揮するドゥカティ勢でしたが、どうやらそれが仇となったようです。2位のロレンソをドヴィツィオーソがインコースを確保して抜こうとしますが、速度を殺しきれずコーナーで若干ワイドに膨らみます。ロレンソはこの隙を逃さずに自分のラインを守り、アウトからインに入って抜き返します。
しかし、ここぞとばかりにペドロサもインを攻めていたため、戻ってきたロレンソと激突。アウトからインに入ろうとしたロレンソは外にはじき出され、ドヴィツィオーソのラインに重なりバイクの足を払ってしまいます。
ペドロサはフロントのコントロールを失いハイサイド。ドゥカティ勢はコース外へスライドしていきます。コーナーを曲がる際は進行方向しか見ないので、ペドロサのインコースを外から攻めたロレンソは、ペドロサにとってまさに死角からの一撃だったんでしょうね。
ここでは当事者たちがMotoGPの中でも特別ルールを順守する模範的ライダーばかりだったため、「だれが悪い」という結論には至らず各々の反省と考察を協議して和解するという、平和的解決に落ち着きました。
それにしても、ピット解説のSimonが解説をしている途中の出来事だったので、Simonが熱心に話しているのをコメンタリーチームのMattが「ごめんSimonちょっと中断~!」と一刀両断するのは非常にシュールでした。
オーストリアGP ロレンソVSマルケス
おそらく2018年度で一番の名勝負が生まれたオーストリアGP後半での首位争いです。大きく距離を稼いだマルケスにドゥカティ勢が驚異の追いつきを見せ、マルケスの尻にかじりつきます。
スリップストリームで加速に入ったロレンソがドゥカティならではの「ぶっちぎり→インコース確保」でマルケスを抜かします。
しかし、負けず嫌いのマルケスがすぐにインを攻め返します。危うく接触を仕掛け両者若干ラインを乱しつつも首位争いを続行。その隙にドヴィツィオーソが空いてしまった差を縮めます。
第9コーナー直前での立ち上がりでドゥカティの加速力が爆発、インを確保したロレンソが再びトップに躍り出ます。このまま二人の首位争いが最後まで続きます。
しかし、残り3ラップの第3コーナーで、ソフトタイヤが災いしたのかロレンソがワイドに膨らみ、真後ろでチャンスを虎視眈々と狙っていたマルケスがその隙にインを思い切り攻めます。
またもや第9コーナーでロレンソが盛り返し、再びロレンソに主導権がわたります。が、13コーナーでホンダの強さが光ります。マルケスがまたもや1位に返り咲き、さらに続く、ドゥカティが得意とする第9コーナーでのオーバーテイクを完封します。
もちろんロレンソも黙っていません、直線でドゥカティパワーを見せつけ最後の第1コーナーを制します。
ファイナルラップの第3コーナー、再びマルケスがインを攻めますがロレンソはあえてこれを見越して、アウトにわざと開きつつ加速力を生かして外からマルケスを抜き去っていきます。
その後マルケスは決め手に欠けたのか攻めきれず、ロレンソがレッドブルリンクを制します。
アラゴンGP ドヴィツィオーソVSイアンノーネVSマルケス
しょっぱなのコーナーでのロレンソの転倒から始まったアラゴンGP。運よくクラッシュの影響を全く受けなかったスズキ勢のアンドレア・イアンノーネが首位争いに参加します。
残り5ラップからイアンノーネとドヴィツィオーソとマルケスの激しい三つ巴の争いが繰り広げられます。第13コーナーでワイドに膨らんだドヴィツィオーソの内側をマルケスが奪います。
しかし負けじとドヴィツィオーソも第14コーナー手前で勝負を仕掛けます。両者譲らずと見えた矢先、後ろから何やら青い影が……
マルケスとドヴィツィオーソがぶつかり合う中、第14コーナーのインを奪ったのはなんとスズキ勢のイアンノーネ!そのままわざとアウトに膨らみ、外からドヴィツィオーソとともにマルケスを挟む形で追い抜いていきます!
まさかの3台並んでのコーナリング。後半戦でここまで湧く首位争いはなかなかお目にかかれません!
残り4ラップの第5コーナーでマルケスが仕掛けるも、コーナーを攻めきれずドヴィツィオーソに首位を再取得されます。その後残り3ラップの第1コーナーでマルケスにインを奪われドヴィツィオーソは首位を逃し、アラゴンGPの幕を閉じます。
2019 MotoGPのおさらい
いかがだったでしょうか。今年のチャンピオンシップも去年と似たような結果となってしまいましたが、後半でのロレンソの絶好調が目立つのと、ドヴィツィオーソVSマルケスの勝負が非常に多い年でしたね!
来年度はペドロサが座っていたホンダ席にロレンソが納まり、ペドロサ本人はKTMのテストライダーの任につきます。ドゥカティの空いた席にはなかなか好成績だったペトゥルッチが座ります。
ヤマハチームは変わらずロッシとビニャーレスですが、成績の振るわないビニャーレスの今後が心配なのと、いまだにマシンの電子制御の甘さとトップスピードのなさが非常にネックですね。今後の進展に期待です。
スズキライダーだったアンドレア・イアンノーネはアレイシ・エスパロガロと同じアプリリアチームへ移籍。テック3のザルコはKTMに参入とのことです。
来年はザルコとペドロサによって強化されたKTMと、ホンダの最強マルケス&激動ロレンソに注目ですね!以上、MotoGPの振り返りと今後の展望をお届けしました!