初めてのバイクにオフ車を選ぶ人は、明確に競技志向での人を除くと、現実にはかなり少数派ではないかと思われますが……
実のところオフロードビギナーにおすすめできるバイクというのは、バイクそのものの初心者やDIY整備初心者にもおすすめだったりもします。
今回の記事ではそういったビギナー向けのオフ車を考えた場合、どういったものがあるかご紹介します。
なぜオフ車を薦めるか
以前の記事でも触れていますが
- 軽量で頑丈な車体
- 低~中速域で粘って扱いやすい特性のエンジン
- 幅が広く切れ角が大きく、取りまわしやすいハンドル
- ソフトでストロークが長く、荷重の変化からの挙動を掴みやすいサス
- 整備性に優れたシンプルでダイレクトなメカパート
- 常に周囲に注意が効いて汎用性の高いアップライトなライポジ
加えて、燃費や消耗品といったランニングコストの安さや、排気量によっては四輪のオマケ保険で賄えるといった維持費の安さもあって、街乗りも視野に入れた初心者の初バイクとしても、オフロードビギナーの2台目以降としてもメリットが大きくなります。
初心者向けのオフローダー
(公道仕様の)ラインナップに目を向けると、フルサイズ車や250以上の強力なマシンまでも存在しますが、それらはどちらかといえばモトクロスや本格エンデューロやラリーレイドといった競技に近い用途に寄せての、またそういったコースに持ち込んでこそ楽しめる玄人向けのものといえます。
であるから不整地のギャップ等による外乱を受けないよう、むしろアクセルは開け気味に走り抜けることまでも想定したストロークの長いサスと車高は、ビギナーにとっては本来の目的に沿って性能を引き出すことは勿論、シート高そのものまでが文字通りの高い壁となってしまいます。
ヤマハのセローが1985年のデビューの際に掲げて先鞭をつけた「二輪二足」「マウンテントレール」のコンセプト。
端的に言ってしまえば、速度よりも安全確実な走破性を狙ってのもので、モトクロッサーよりもトライアラーに近い性格を持たせながらも「素直に足ついちゃえば / 足使っちゃえばいいじゃん」といったものです。
それでいて
- 乗車はスタンディングが基本のためシートが低すぎる、そもそも無かったりもする
- 通常変速はしないため誤操作を防ぐためにシフトレバーが離れており、日常の走行ではミッションが扱い辛い
- 積載性が全く無い
- 航続距離を考えていないタンク容量
といった純トライアラーよりも、日常および舗装路での使い勝手は格段に良いという汎用性の高さがあります。
次項からは俗に「短足オフ」とも言われる、初心者にお勧めしたい初代セローのコンセプトに追随したものはどんなものがあるかご紹介します。
ヤマハ・セロー225
言わずと知れた名車で、足つきを良くすることによって
- 走破性を高める
- 走破難易度を下げる
- 使い勝手を高める
というコンセプトの始祖でもあります。
すでにだいぶ古い車両でもありますが、それだけにタマ数は豊富でコンディションと価格も様々です。
絶版モデルながら、基本頑丈でもあり維持に困るほどのパーツ難も聞きませんし、根強いファンがいるだけに目的に応じたアフターパーツも未だ豊富に存在し、より山遊びに没頭したいユーザーであれば現行型よりも選ぶ利点がある場合もあります。
12/7現在の中古価格帯 7万~37.5万 (GooBike調べ)
カワサキ・スーパーシェルパ
セローとその追随車の成功を横目で見ながら、カワサキが手持ちのありもので作ってみたバイク。
結果的には一長一短で、セローが低速での粘りに徹底的に拘っているところを、比較的高回転をローギアードで伝達することにより耐ストール性能を実現しながら、パワーからくる余裕をも確保しているともいえ、泥濘地登りの再スタート等ではセローに軍配があがりながらも、舗装路の高速巡行の場面では排気量とDOHCの差を見せつけることになります。ちなみにエンジン回りの整備性においては、セローよりも格段に面倒な点が多くなったり、悪路走破性においては若干セローに劣る部分もあります。
こちらも古い車両ながら、同様にタマ数は豊富でまだまだ選び放題といえるレベルではあります。
12/7現在の中古価格帯 13万~41.8万 (GooBike調べ)
ヤマハ・セロー250
225からのモデルチェンジで登場した当初こそ、初代からのコンセプトを薄めて、より日常の汎用性に振った点を批判されたりもしていましたが、その汎用性の高さ故にここまでの長寿モデルになったともいえます。
性格・性能的には上記のセロー225とスーパーシェルパの中間といったあたりでしょうか。
現行型だけあって、予算さえ用意すれば新車~間違いのない中古までが確実に入手できるのが強みとなります。
12/7現在の中古価格帯 19万~130万(※) (GooBike調べ)
(※)上位の何台かはカスタム車両/プレミア付車両で、一般的な車両としての上限は63.1万円です。
セロー250生産中止!?
ちょうどこの記事を書いている最中に、国内むけ生産が終了・ファイナルエディション発売とのアナウンスがありました。
2017年の中断時には復活するとの明言があり復活しましたが、今回はないようです。
トレッキング車の名門とはいえ、採算度外視することはできないのでしょう。
ここまでライダー人口が減ったからには、より目的に特化して迎合したものが求められる?であろうことは理解できますが、そもそもの間口が狭くなってしまうのも後々首を絞めることにならないか?とは思ってしまいます。
もっとも「国内向け生産が終了」であって、逆輸入ものが入ってはくるのでしょうし、実は後継が用意してあるのかもしれませんが……
まとめ
実のところ、バイク初心者・オフロード初心者に勧めたいオフロード車はまだまだ多数あるのですが、入手のし易さとコストパフォーマンスから今回は上の3台に絞りました。
またの機会があれば、他メーカーの汎用性の高い短足オフロード車や、逆に一定の目的に特化したような車種、はたまた各段に維持費を抑えられる125cc以下のものについてもいずれ触れてみたいと思っています。
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kawauso46
オフグラフィックTV:セロー225
オフグラフィックTV:スーパーシェルパ