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最近のバイクって高すぎない?価格上昇の悲しい理由とは

最近のバイクって高すぎない?価格上昇の悲しい理由とは

デフレ、デフレと言われ続けて20年ほどになり、ちらほらとはその回復の兆候を示した報道を聞きかじることもあるものの……

筆者のようなこれといった財産もない、何代も続く由緒正しい庶民にはまるで景気上昇の実感が湧くことのない昨今。

 

男女別・学歴・正規非正規と細かく分けていけばまた違った見え方はしてくるんでしょうが、賃金や初任給といった収入面での平均の推移グラフは、90年代中盤以降ほぼ横ばいペースとなっています。(2010年代中盤よりやや上昇傾向)

ITによる流通やサービスの変革もあって、主要な物価もほぼ横ばい傾向のものも比較的多いようではありながらも、バイクの価格上昇率妙に激しいんじゃない?今回の記事ではその原因と理由について触れてみたいと思います。

 

需要とコスト

バイクの価格の元となる要素として、原材料費・研究開発費・生産設備費・流通費・人件費・広告宣伝費等といったものがあります。

乱暴に言ってしまえば、原材料を一括して大量に仕入れるほど安くなり、さらに生産設備をすり潰すまで作れば、これらのコストを生産数で頭割りすることができ、1台あたりのコストを抑えることができます。

しかし、そうやって生産したものを吸収するだけの需要がないと、作ったものは全て不良在庫となってしまいます。

 

「(エンジンつきの)二輪車」という大きなくくりで見ると、日本でのバイク需要は1980年代初期のピーク時には300万台であったものが、現在では30万少々とほぼ1/10になっていると聞きます。

実際には各メーカーとも各クラスや車種間、輸出や海外生産で融通と調整しているでしょうから、これまた乱暴な言い方で実情には沿っていないでしょうが、簡単に言えば10人で割り勘していた様々なコストを一人で負担することになったようなものです。

 

需要の低下

最近のバイクって高すぎない?価格上昇の悲しい理由とは

日本での二輪車需要がピーク時の約1/10となったといわれていますが、その下げ幅の大部分が原付クラスによるもので……

  • AT限定免許の新設(これまでMTでは免許取得が難しかった層の四輪への移行)
  • 軽自動車の商品力アップと世相的な追い風
  • 電動自転車の普及

と、上から(四輪カテゴリ)も下から(自転車カテゴリ)も挟撃された形といえます。

 

この需要層は、よほど魅力的なものを出したとしても原付に回帰してくることはない / 各々でより良いものをと開発・製造して競争するよりも、横並びのものを揃えたほうがよいと考えたのか、あのバイクブームのトリガーになったともいえるHY戦争といわれるシェア争奪戦を繰り広げたホンダとヤマハが、原付ではホンダのOEM生産で業務提携するという事態にまでなっています。(これにより前項で述べた開発費や生産設備費といったものをシェアし、より大きな需要で案分することができます)

 

加えて、世界的に見て他に類がない50ccという枠を取り払い、四輪の付帯免許を125ccまで可にして、世界標準車としてボリュームメリットを持たせようという動きもありますね。

 

その他1970年代後半から地域や学校によっては現在に至る、3ナイ運動による(高校生に)「免許を取らせない」「バイクに乗せない」「バイクを買わせない」といった、実効に加えて「オートバイ=悪」というイメージの植え付けによる、事実上の若年需要のシャットアウトも提唱者の立場から言えば「功を奏した」と言えるでしょう。

 

タイで発売されるスーパーカブのカラーリングがカワイイ件

メーカー側もライダー人口の減少に危機感をもって、一時は利益率の高い大型に注力してリターンライダーに訴求する姿勢を見せていましたが、ライダー平均年齢が、ほぼバイクブーム時ライダーの平均年齢のままスライドしているのに過ぎないのに焦ったのか、汎アジアの需要に寄りかかる形ではありますが、ここのところメーカー各社ともエントリーモデルの導入と充実に忙しそうです。

 

これで本当に最後!ヤマハ最終型セロー発売で35年の歴史に終止符

それとは逆に、セローの(国内向け)生産中止といった、間口を狭めてしまうような動きもあったりします。

逆にいえば、あのセローでさえ新しく環境基準に適応させるためのコストを上乗せしてしまうと、むしろ需要が減少する価格帯になってしまうほど日本のライダー人口(特にオフローダー)は減っていると、ヤマハは判断しているのかもしれません。

加えて、二輪でも駐車が厳しく取り締まられるようになってきたことや、趣味分野としての自転車の盛り上がりも、需要への影響は少なくないと思われます。

 

その他の要因

これらは高価格化の直接要因ですが、上項のとおり需要低下による高コスト化にも間接的に響いてきます。

  • より厳しくなる環境性能基準への適応
  • 新たな義務付け装備(ABS等)
  • 資材・原料の高騰>石油製品、軽金属(アルミ・ジュラルミン)だけでなく、チタンや電子部品(貴金属・レアメタル・レアアース)等も

より高性能なパーツや機構が装着義務化や標準装着されて大量生産されることにより、パーツ / 機構単体では低コスト化が進むとはいえ、バイク1台あたりで見ると価格上昇することには変わりありません。

 

まとめ

最近のバイクって高すぎない?価格上昇の悲しい理由とは

あくまで筆者個人の肌感覚からの意見で根拠は薄いのですが、内需だけで「半年ごとにニューモデル」とまで言われたバイクブームのころは、価格 / 性能競争からくる供給過多に需要と景気がうまくかみ合った異常な状態だったのではないかと思います。

その後に3ナイ運動によって阻害された / されている世代もあるだけに、あの時代をそのままもう一度というのは難しいでしょう。

 

とはいえ、このままでは日本のバイク市場は縮小していくばかりで、「ライダー少ない→売れない→高価格化→買えない→ライダー減る」という負のスパイラルをひたすらに辿ることとなります。

「ライダー人口なんて増えなくてもいいよ」なんて嘯いている知り合いもいますが、利用者が少なくなればライダー向けのサービス・施設といったものはさらに少なくなるでしょうし、自らが享受できない隠れた部分で割高な新型車を買うよりは、その逆のほうが当然好ましいでしょう。

 

以前のバイクブームの前にも不景気自転車ブームがありました。あの時代をそのままもう一度は難しいとは書きましたが、時代は繰り返すとも言います。

250cc4気筒のZX-25Rを筆頭に各社の新世代モデルが、これからモータリゼーション成熟期を迎える汎アジアの需要を巻き込んでのニューモデルが、日本と世界の若者の心と懐具合に刺さることに期待したいところです。

参考-flickr
Writer: Kenn

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