みなさんが幼いころに思い描いた・夢見た未来の乗り物はどんなものでしたか?筆者にとっては、高層ビルを縫うように張り巡らされた透明チューブの中を行き交うカプセル状の乗り物。どっぷり昭和の子供雑誌のイメージですね。
21世紀になっても根本が変わらないまま
しかしながら時は既に21世紀。エアカーがロサンゼルスの街を飛び交っていたSF映画の名作「ブレードランナー」の描いた2019年は既に過ぎてしまいました。クルマの姿や機能は格段に洗練され、電動化も進みつつあるとはいえ、その根本は100年前から変わらないままに飽和しています。
余談ですが、フィクションの未来予測でも現代の技術が残っている例もあったりします。トム・クルーズ主演のSFスリラー「オブリビオン」に登場するバイクもそのうちのひとつ。「2077年でもチェーン駆動のままかい!」なんて心の中でツッコんでしまいました(笑)。
そんな現在ですが、決してクルマの進化が進んでいないわけではありません。荒唐無稽ではない「未来の乗り物」のコンセプトがイスラエルから登場しています。
未来のクルマは平べったい!?
こちらがイスラエルのベンチャーREE社が生み出した次世代のクルマ。なんだか平べったくてまったくクルマっぽくありません。ミニ四駆に親しんだ人であれば、シャーシだけの状態を思い出すことでしょう。
実はそれもそのはずで、これはEVを制作する際の土台、つまりプラットフォームとして作成されたものなんです。その名もスケボーみたいな見た目にちなんで、「skateboard platform」。何が革新的かというと下記の4点になります。
- 駆動・制動・操舵といった機能を、車輪毎に集約して独立させ、フルフラットなシャーシを実現。
- フラットなシャーシ底部全てを搭載スペースとしたことによるバッテリーの大容量化。
- フラットなシャーシにより、スペース効率を最大とする。
- フラットなシャーシによる、デザインの自由度アップ。
1900年のパリ万国博覧会で展示されたローナー・ポルシェの例があるように、インホイールモーターをはじめとする発想と技術そのものは100年以上前からあるものですし、車台のモジュール化もEVが普及し始めたころから試行されていたことです。
それでも、近年の技術によるコンパクトかつ大出力、大容量なモーターとバッテリーそれぞれの特性を最大限活かしての再構築というところが、「再発明」といわしめるゆえんでしょう。
プラットフォーム化による恩恵
平べったいシャーシの状態でクルマとして走行に必要なすべてを備えているskateboard platformは具体的には下記の2点のメリットを備えています。
パッケージングが自由
走行のためのモジュールは最小かつ四隅に置かれていますので、シャーシ上ほぼ全ての空間を乗員と積み荷のためのスペースとして自由に使えます。
例えば、自動運転と組み合わせることにより、現在の軽自動車サイズ内での6~8名が乗車できたり、4名が対面して足を投げ出して寛いだまま移動できるなんてことも可能です。シャーシ上面全てを積載スペースにすることもできますし、物流がさらにスムーズになりそうです。今まで以上に車内の空間が自由になりますね。
目的に応じたボディ換装
skateboard platformを1台持ってさえいれば、ミニ四駆のごとくボディの換装が容易です。ある日はセダンでフォーマルに、またある日は2シーターオープンスポーツで走りを楽しみ、はたまた週末にはトラックにしてソファを買いにいくといった使い分けもできることでしょう。
さらに運転のノウハウや、現在のクルマに必要な大規模生産設備が不要になることから、馬車~自動車創成期のようなボディ製造専業メーカーも多数興されることも予想されます。実用面とデザイン面からの様々なユーザーの要望に事細かく応えられるようになり、クルマの個性化がどんどん進むなんて未来もありそうです。
ただ、衝突安全等の法制のクリアであったり、各家庭で簡単にボディ換装できるものなのか?といった点、はたまた換装したボディや搭乗・搭載により四輪それぞれにかかる荷重を目的に応じて走り味を最適化するためのサスセッティングはどうなるの?などなど、まだまだ課題はたくさんありそうですが。いずれにしても夢のある話です。
日本企業もパートナーとなっているREE社
REE社は2013年に設立されたモビリティベンチャー企業で、先進テクノロジーにより、自立型を含むEVの設計と組み立てといった、EVプラットフォームを「再発明」することにより、自動車設計に革命を起こすことを使命としています。昨年の2019年モーターショーでは日野自動車と共同開発した、EV大型トラックのプラットフォーム「HINO FlatFormer」を展示したことは記憶に新しいところ。カヤバや三菱商事といった他の日本の業も開発パートナーとして名を連ねており、今後の活動から目が離せないモビリティ企業のひとつとなりそうです。
未来のクルマはイスラエルと日本のコラボレーションから生まれるかも?