バイクに求める用途は大きく分けて2つ。ひとつは、ツーリングなどといった余暇時間を充実させるための趣味材として、もうひとつは、日常の足(移動手段)として通勤通学・買い物などに使用するパーソナルコミューターとしてだ。今回ご紹介するBMWモトラッドの新作バガー「R18B」は、まさに前者の用途であり、実に優雅で威風堂々とした”乗るほどに楽しい”バガーモデルだ。
「R18B」は、BMWモトラッド史上最大排気量を誇る1,801ccボクサーエンジンを搭載した「R18」シリーズの派生モデルであり、プレミアムなバガーモデルだけに、新車販売価格もそれなりにプレミアム。とはいえ、中古車ですら価格高騰をみせる昨今のバイク市場の動向に鑑みると、高機能かつデザイン性の高い「R18B」を新車で購入するという選択肢も、長い目で見たら良い選択となるはずだ。
BMW ヘリテイジ・プロジェクト
BMWモトラッドの”ヘリテイジ・プロジェクト”は、2014年デビューのロードスターモデル「R nineT」からスタートした。そして、その後クルーザーカテゴリーを狙うべく間髪入れずリリースしたのが「K1600B」「K1600グランドアメリカ」である。当時、人気に熱を帯びはじめていたクルーザーカテゴリーへ当て込むかたちでの投入であったものの、基本的な車体構成は従来のK1600シリーズをベースとした改変であったため、ユーザーからの反応はいまいちであった。さらに、BMWモトラッドの長い歴史において過去にも同様の事例はあり、1997年に発売されたクルーザースタイルの「R1200C」もまた不遇に終わったモデルであった。
これまでクルーザーカテゴリーにおいて辛酸を舐めてきたBMWは一念発起し、同社の持つ伝統を活用した原点回帰として、ボクサーエンジンを用いたクルーザーモデルを現代の解釈によって作り上げることを決意した。そうして出来上がったのが、同社史上最大排気量の新型ボクサーエンジンであり、これを搭載した「R18」シリーズだ。
BMW渾身のバガー「R18B 」
こちらが、「R18」から派生したバガーモデルとなる「R18B」。※”B”はバガーの頭文字
先の通り「R18」シリーズは、同社のヘリテイジアセットをもとに1936年製「R5」のスタイリングをオマージュしたモデルであるため、いちから着想を得ている。つまり、他社の”それ”とは全く異なる生い立ちだ。
ワンランク上の上品さを漂わせる「R18B」

フルインテグラルABS(前後一方へのブレーキ操作時に前後連動してくれる)の安心感は大きい
バガースタイルであるR18Bは、いわゆるスポーツツーリングクルーザーセグメントであり、長距離ツーリングモデルとスポーツモデルの”美味しいところ取り”なモデルだ。リベラルなユーザーをターゲットとしたモデルだけに、スタイリングへの妥協は一切感じられない。
今回試乗した”ファーストエディション”は、コントラストカットのホイールやエンジンカバーなど各部にクロームパーツが使われているほか、タンクやフェアリングにピンストライプが施されている。また、R18シリーズの中でもR18Bのみエンジンがマットブラック塗装となっている。
ワインディングでも俊敏なフットワークを見せる
通常フロントフォークはステアリングステムよりも前側にオフセットするところを、逆オフセットの設計となっているため、コーナリングでもスムーズなハンドリングを獲得している。そしてもちろん、優れた直進安定性も持ち合わせている。
なお、足付き性も非常に良く、シート高はちょうど”原付スクーターくらいの高さ”だ。
よどみなき流麗なスタイリング
精悍なショートスクリーンのフェアリング

ヘッドライト上部にあるのがACC用のレーダーセンサー
スタイリングを決める大型のフェアリングは、バガースタイルゆえにショートスクリーンタイプとなっている。また、そこへセットされるLEDヘッドライトは、コーナリング時に最適な方向を照らしてくれるアダプティブ・コーナリングライトや外光検知のデイタイムライディングライトの機能を備えている。
さらに、標準装備のACC(アクティブクルーズコントロール)およびコーナリングコントロールシステムは、クルマと同様に車間距離を一定に保ちながら速度を自動調整してくれるほか、コーナリング時に最適速度へと減速調整もしてくれるのである。
一体感のあるパニアケース

パニアケースの容量は27L。
バガースタイルの要であるパニアケースは、しっかりとリアフェンダーに沿った美しいラインを描いている。
10.25インチの大型フルカラー液晶ディスプレイ

ライディングモードは「Rain」「Roll」「Rock」の3種で、路面や走行状況にあわせて任意に選択変更ができる
スピードメーター、タコメーター、ガソリン残量メーター、パワーリザーブメーターはあえてアナログタイプとなっている。その下に鎮座するのが、オーディオシステムをはじめ様々なデータを表示する10.25インチの大型フルカラー液晶ディスプレイだ。新旧融合のデザインレイアウトが実に美しい。
こちらは左側のスイッチボックス。操作を集約するため仕方のないことだが、ある程度の慣れは必要だろう。ちなみに、スイッチボックスとグリップの間にあるのは、液晶ディスプレイに投影されるシステムを操作するためのコントローラー。
サウンドシステムはアンプメーカーのマーシャルと共同開発
こちらのサウンドシステムは、ギターアンプメーカー「マーシャル」と共同開発したもの。審美眼を持ったユーザーも納得のコラボレーションと言えよう。
また、マーシャル製スピーカーはオプションでパニアケースにも装着できる。
バックギアも標準装備

クロームメッキのレバーがバックギアのON/OFFレバーで、その右上にあるのはシガーソケット
車重は398kgと重量級だがバックギアを標準装備しているためご安心いただきたい。
大迫力のビッグボクサーエンジン1,801cc!
そしてこちらが、R18シリーズ共通の新型ビッグボクサーエンジン(1,801cc)。大排気量ボクサーゆえに始動時はかなり左右に振られるため、多少の慣れが必要だ。
充電可能なスマホ用ラゲッジスペース
タンク上部には、スマートフォンを充電しながら収納できるラゲッジスペースを完備。
また、日本仕様独自の装備としてETC2.0車載器を標準装備している。
カジュアルに乗りたいBMW、それが「R18B」
上品なエクステリアと重厚感のあるルックスの「R18B」だけに、なんとなくハードな印象のレザーウェアをチョイスしがちであるが、やはりバガースタイルであればカジュアルなスタイルで乗ってこそハマるのではないだろうか。
これまで、バガースタイルといえば一社独占に近い状態であったものの、北米やヨーロッパでの需要増を背景に様々なメーカーがクルーザーカテゴリーに参入している。そこへ新しく参入するBMW謹製のバガー「R18B」は、ゲームチェンジャーとなるポテンシャルを十分に秘めている。
個性的で高級感のあるスタイリングと、伝統的でありながら革新的なパフォーマンスを兼ね備えたR18Bが乗り手に与える至高のバイクライフは約束されている。
BMW R18B [ファーストエディション]
- エンジン:空油冷2気筒4ストロークボクサーエンジン
- 排気量:1,801cc
- 最高出力:67 kW(91PS)/4,750 rpm
- 最大トルク:158 Nm/3,000 rpm
- 全長×全幅×全高2,560×970×1,400(mm)
- シート高: 720 mm
- 車両乾燥重量:398 kg
- 燃料タンク容量 約24 L
- メーカー希望小売価格 :341万8,500円(税込)〜