バイクレースが好きなら一度は聞いたことがあるであろうペトロナスはマレーシアの大手石油会社です。今でこそレースをサポートする企業として有名ですが、2003〜2005年の間、世界スーパーバイク選手権(WSBK)に参戦する車両も開発していました。その名はペトロナスFP1。
存在期間はわずか2年とかなり短命であったため、レース好きの人でも知らない人も多い幻のバイクとも言えます。
現在世界にわずか60台しか存在しないため、残っているバイクは博物館行きであることは間違いありません。しかしその中の1台がなんとオークションに出品されていたのです!
落札額は£26,500、日本円に換算すると、約354万円ほどなので幻の一台にしてはちょっと寂しい価格でした……。それだけ認知度が低いことの裏返しかもしれませんね。とはいえ、伝説であることは確か。今回はそんなペトロナスFP1についてご紹介していきます。
ペトロナス FP1のレース歴

※画像はイメージです
FP1はMOTO-GP参戦を目指して開発が始まりましたが、開発途中で方針が転換されWSBKをターゲットにすることに。
そうしてFP1は「Foggy PETRONAS Racing」から参戦。デビューイヤーである2003年こそ成績がふるいませんでしたが、翌2004年シーズンにはポールポジション、表彰台をそれぞれ2度も取得しています。
残念ながら2005年シーズンが最後となってしまいましたが、しっかりと成績を残しているため、ポテンシャルの高さがわかります。
当時のWSBKレギュレーションは、
- 4気筒750cc
- 2気筒1000cc
の2通りのエンジンだけでなく、この間の排気量として3気筒900ccのエンジンも認められていました。
ホンダやヤマハ、カワサキと言った主要メーカーは4気筒ナナハン、ドカティはVツインエンジンの2気筒のリッターを選択する中、ペトロナスFP1は3気筒900エンジンを採用して開発が進められていました。
軽量なペトロナス FP1の特徴
カーボンファイバー製のカウルに包まれた車体の中には、
- オーリンズサスペンション
- ブレンボブレーキ
- OZレーシングホイール
が標準装備されています。900ccの排気量でありながら乾燥重量は181kgと、非常に軽量な設計となっています。
わずか60台現存する市販版ペトロナスFP1
WSBKに参戦するためには、ベースマシンとして規定台数以上の市販車を販売してホモロゲーションを獲得しなければいけません。そのため、バチバチのレーサーとして開発されたFP1ですが、なんと一般販売された車両でもあるのです。
ただし販売期間はごくわすか。当時の生産台数はイギリスで75台、マレーシアで75台、合計150台となっていました。
2003年に生産されたFP1のうちのほとんどは実際お客さんに購入されたわけではなく、スクラップにされてしまったという話もあります。しかし最近、イギリスで在庫として60台が残っていたことがわかりました。
その中の1台がオークションに流れてきたのはビックリですね!
コンパクトな3気筒エンジン搭載のコーナリングマシン
FP1コンパクトなエンジンも搭載した、コーナリングマシンとして非常に優れたバイクだったようです。加速性能は4ストロークエンジンよりも2ストロークに似ているともいわれています。
さらに3気筒エンジンは、
- 車体をコンパクトにできる
- マスの集中化に貢献できる
というメリットもありますので、レースシーンでも非常に操りやすいバイクだったことでしょう。
また、FP1はシフトダウン時に急激なエンジンブレーキがかからないように調整してくれるスリッパークラッチを搭載しています。
レーシングマシンでスリッパークラッチがないと、エンジンブレーキが効きすぎてブレーキング時に車体が大暴れします。しかもFP1のエンジンは3気筒のため、4気筒エンジンと比べるとピストン自体のサイズが大きく、強烈なエンジンブレーキが発生するのです。
絶妙に調整されたスリッパークラッチのおかげでエンジンブレーキを上手く逃してくれるため、コーナリングマシンとして活躍できたのですね!
まとめ:FP1の買い時は今だったかも
滅多に市場に登場しないため、幻のレーサーとも言われたペトロナスFP1。オークションに出品されることで、世界にFP1の認知が広まったのでは。今回、これだけの安さで手に入れたオーナーは10年後高騰した価格にほくそ笑んでいるかも知れません。
カッコよさだけでなく、そのバイクが辿ってきた数奇な運命を知るともっと興味が湧いてきますね。